教育費の積立額は、全国平均だけでは決まりません。
進路、通学方法、すでに貯めた額、使える支援によって、家庭ごとの不足額が変わるからです。まず「3年以内に必要なお金」と「その先に備えるお金」を分けます。次に、低め・標準・高めの3通りで不足額を出し、使うまでの月数で割りましょう。
この記事では、幼稚園から大学までの公的な調査を確認しながら、毎月の積立額を決める手順を紹介します。数値と制度は2026年7月27日時点です。
まず「教育費」と「積立で備える額」を分ける
教育費は、一度に全額を払うものではありません。
給食費、教材費、塾代などは、毎月の収入から払う家庭も多いでしょう。一方で、受験料、入学金、制服、指定用品、一人暮らしの準備費は、短い期間にまとまって必要です。
そこで、教育費を次の3つに分けます。
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毎年の家計から払う費用
給食、教材、部活動、塾、習い事などです。直近12か月の支出から月平均を出します。 -
3年以内にまとめて払う費用
受験料、入学時納付金、制服、端末などです。候補校の資料から実額を調べます。 -
大学や専門学校など、その先に備える費用
学費、通学費、住居費、引っ越し費などから、将来の家計収入で払えない分を積み立てます。
文部科学省の学習費総額には、学校教育費だけでなく、給食費や塾・習い事などの学校外活動費も含まれます。令和5年度子供の学習費調査の総額を、そのまま入学前に貯める必要はありません。
積立の目標にするのは「教育費の総額」ではなく、「支払う時点で家計から出せない不足額」です。この違いを先に押さえると、大きな平均額を見て準備を諦めずに済みます。
公立・私立と大学生活費の目安
文部科学省の訂正版によると、子ども1人あたりの年間学習費総額は次のとおりです。学校教育費、給食費、学校外活動費を含む平均値です。
| 学校段階 | 公立・年額 | 私立・年額 | 公立を月割りした目安 |
|---|---|---|---|
| 幼稚園 | 184,646円 | 347,338円 | 約15,400円 |
| 小学校 | 366,599円 | 1,741,516円 | 約30,600円 |
| 中学校 | 542,450円 | 1,560,359円 | 約45,200円 |
| 高校(全日制) | 596,954円 | 1,179,261円 | 約49,700円 |
幼稚園3歳から高校3年までの15年間を単純に合計すると、すべて公立で約614万円、すべて私立で約1,969万円です。ただし、これは各学年の全国平均を足した数字です。特定の家庭へ届く請求額ではありません。
大学では、学費に加えて生活費も大きな差になります。
日本学生支援機構(JASSO)の令和6年度学生生活調査結果では、大学学部昼間部の学生生活費は年平均201万9,100円でした。内訳は学費122万1,800円、生活費79万7,300円です。設置者別の合計は、国立157万7,100円、公立146万3,400円、私立216万300円でした。
この調査は2024年11月に行われ、2026年3月に公表されたものです。幼稚園から高校までの学習費調査とは、対象者も費用の分け方も異なります。両方を同じ定義の表として合算しないでください。
平均額は、候補を絞るための入口として使います。3年以内に進学する学校は、次の実額へ置き換えましょう。
- 学校の募集要項にある入学金と授業料
- 前年度の入学説明資料にある制服、教材、端末の費用
- 自宅からの定期代
- 受験料と併願校への納付金
- 自宅外なら家賃、敷金、引っ越し、帰省の費用
まだ学校が決まっていない場合は、通う可能性がある学校を2校から3校選びます。各校の費用を調べるだけでも、全国平均より家庭に近い目標額になります。
積立額は「不足額÷残り月数」で決める
毎月の積立額は、次の式で計算します。
(目標額-準備済み額-受給が確定し、教育費へ回す額)÷使うまでの残り月数
目標額には、積立で備える範囲だけを入れます。未申請の支援や、生活費に使う児童手当は差し引きません。
3通りの目標を作る
進路が決まっていないときは、1つに断定しないほうが動きやすくなります。低め・標準・高めの3通りを作りましょう。
| シナリオ | 進路の仮定 | 目標額 | 準備済み | 確定して充てる額 | 不足額 | 残り月数 | 毎月の積立額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 低め | 公立中心・自宅通学 | 180万円 | 30万円 | 60万円 | 90万円 | 180か月 | 5,000円 |
| 標準 | 公立中心・自宅外も検討 | 300万円 | 30万円 | 90万円 | 180万円 | 180か月 | 10,000円 |
| 高め | 私立期間・自宅外を含む | 480万円 | 30万円 | 90万円 | 360万円 | 180か月 | 20,000円 |
すべて計算方法を示す仮定です。300万円は、大学費用の全国共通の必要額でも、公的な推奨額でもありません。候補校の実額と、家庭がどこまで積立で備えるかによって作り直してください。
高めの月額が家計に収まらなくても、すぐに進路を諦める必要はありません。まず3年以内の確定支出を優先します。その先は標準の月額から始め、進路情報が増えた時に更新します。
年齢別に同じ目標額を比べる
次の表は、18歳までに300万円を用意する単純計算です。現在の教育資金は0円、利息と手数料も0円とします。学費総額の予測ではなく、開始年齢による月額差を見るための例です。
| 積立開始年齢 | 18歳までの期間 | 残り月数 | 毎月の積立額 |
|---|---|---|---|
| 0歳 | 18年 | 216か月 | 約13,900円 |
| 6歳 | 12年 | 144か月 | 約20,900円 |
| 10歳 | 8年 | 96か月 | 約31,300円 |
| 15歳 | 3年 | 36か月 | 約83,400円 |
開始が遅いほど、同じ目標額の月額は上がります。ただし、月8万円を用意できないからといって、積立を0円にする必要はありません。入学時に不足する額を先に計算し、月5,000円や1万円など、家計で続けられる額から始めます。
実際に手を動かす手順は次のとおりです。
- 低め・標準・高めの進路を1行ずつ書く。
- 3年以内の候補校について、入学時納付金と指定用品を調べる。
- 教育用の預貯金残高を確認する。
- 受給が決まった支援と、確認中の支援を分ける。
- 不足額を使うまでの月数で割る。
- 給料日や手当の支給後に、自動振替を設定する。
支援制度とお金の置き場所を確認する
支援制度は、次の4段階に分けて管理します。
| 状態 | 積立計算での扱い |
|---|---|
| 受給済み | 教育費に残っている額だけ準備済みに入れる |
| 受給決定済み | 教育費へ回す額と支給時期が確定した分だけ引く |
| 申請済み・審査中 | まだ不足額から引かない |
| 確認待ち・対象外 | 候補として記録し、積立額には入れない |
児童手当
こども家庭庁の児童手当制度の案内では、3歳未満は子ども1人につき月1万5,000円、3歳以上高校生年代までは月1万円です。第3子以降はいずれも月3万円です。支給は偶数月で、前月分までの2か月分が支払われます。
これは制度上の支給額です。全額を教育費へ回す必要があるという意味ではありません。食費や日用品に必要なら、まず現在の生活を守ります。積立の式には、家計で継続して教育費へ回せる額だけを入れてください。
出生や転入時は、原則として市区町村への申請が必要です。申請時期で支給開始が変わる場合があります。自分の受給額と手続きは、2026年7月27日時点の公式案内と、お住まいの市区町村で確認してください。
高校と大学等の支援
高等学校等就学支援金は、授業料を支える制度です。2026年4月の改正で所得制限が撤廃されました。全日制の支給上限月額は、国立9,600円、公立9,900円、私立3万8,100円です。私立高校全日制の年上限は45万7,200円です。
ただし、制服、教材、端末、通学、部活動、受験料まで一律に支払われる制度ではありません。対象校、在籍期間などの条件があり、申請も必要です。詳しい条件は文部科学省の制度Q&Aと2026年4月施行の通知で確認してください。
大学等では、2025年度から多子世帯の学生等が、所得制限なく授業料等減免の対象になりました。大学の減免上限は、国公立が入学金28万円・授業料54万円、私立が入学金26万円・授業料70万円です。
「子どもが3人いれば自動で大学費用が無料になる」という制度ではありません。扶養人数、学生本人の扶養状況、対象校、申請、学業などの条件があります。上限を超えた学費や生活費も残ります。JASSOの多子世帯支援の案内で対象を確認し、受給決定前は積立目標から引かないでください。
使う時期で置き場所を分ける
この記事では、家計管理の目安として「3年以内」と「その先」に分けます。3年は金融庁が一律に示す基準ではありません。入学手続きに必要なお金を、値動きで不足させにくくするための区切りです。
| 確認項目 | 3年以内に使うお金 | その先に使うお金 |
|---|---|---|
| 最優先 | 必要日に引き出せること | 使う年と目標額が合うこと |
| 値動き | 元本割れを避ける置き場所を検討 | 許容できる値動きを確認 |
| 手数料 | 引き出し・振込手数料を確認 | 購入・保有・解約時を確認 |
| 見直し | 学校資料が出た時 | 年1回と進路変更時 |
金融庁の資産形成の基本は、安全性、収益性、流動性(必要な時に現金へ換えやすいこと)の3つとも最高の金融商品はないと説明しています。株式や投資信託には元本割れのおそれがあります。
必要時期が近く、減ると入学手続きに困るお金は、必要日に引き出せることを優先します。その先のお金で投資を検討する場合も、値動き、手数料、換金できる日を確認します。長期・積立・分散という方法でも、将来の受取額は決まっていません。
よくある質問
教育費は300万円積み立てれば足りますか?
300万円は計算例です。全国共通の必要額ではありません。
国公立か私立か、自宅から通うか、一人暮らしかで費用は変わります。積立で学費の全額を備える家庭もあれば、入学時の不足分だけを備える家庭もあります。JASSOの平均年額を入口にして、候補校の納付金、通学費、住居費から家庭の目標額を作ってください。
小学生・中学生から始めても間に合いますか?
始める意味はあります。開始が遅いほど、同じ目標額に必要な月額は上がります。しかし、全額を用意できないから準備が無意味になるわけではありません。
まず受験料や入学金など、期限が近い不足を優先します。家計で続けられる開始額を決め、支援制度も確認します。進路が具体的になったら、目標額と残り月数を更新しましょう。
児童手当は全額を教育費に回すべきですか?
全額を積み立てる決まりはありません。今の生活費や急な出費に備えるお金を先に守ります。
制度上の月額と、家庭が教育費へ回せる月額を分けてください。たとえば月1万円を受給していても、継続して回せる額が5,000円なら、積立計算には5,000円を使います。
教育費の積立に投資を使ってもよいですか?
使う時期と、値下がりを受け入れられるかで考えます。株式や投資信託には元本割れのおそれがあります。
受験料や入学金など、近いうちに必要な額は、必要日に使える形を優先します。遠い将来分で投資を検討する場合は、手数料、換金条件、値動きを確認し、予想利回りを確定額として積立計算へ入れないでください。
高校や大学の支援金は、先に積立目標から引いてよいですか?
受給決定前は引きません。
高校の就学支援金は授業料への支援です。大学等の減免にも対象校、扶養状況、申請などの条件があります。「受給決定済み」と「申請・確認中」を別欄にすると、見込み違いによる不足を防ぎやすくなります。
公式一次情報
確認日: 2026-07-27
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査 結果のポイント」: 幼稚園から高校までの学習費総額を、公立・私立別に確認できます。
- 日本学生支援機構「令和6年度 学生生活調査結果」: 大学等の学費と生活費を、学校区分や居住形態別に確認できます。
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」: 児童手当の対象、月額、支給月、申請手続きを確認できます。
- 文部科学省「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」: 高校の授業料支援の対象や支給上限を確認できます。
- 文部科学省「2026年4月施行の改正通知」: 所得制限の撤廃と学校区分別の支給限度額を確認できます。
- 日本学生支援機構「多子世帯支援について」: 多子世帯の授業料等減免の条件、上限額、申請先を確認できます。
- 金融庁「資産形成の基本」: 金融商品の安全性、収益性、流動性と、元本割れのおそれを確認できます。
制度、支給額、対象、申請時期は変わることがあります。試算を作る時と公開直前に、国、自治体、進学候補校の最新情報を確認してください。
まとめ
教育費の準備は、将来の進路を一つに決める作業ではありません。今わかる実額から不足額を出し、毎年直していく作業です。
- 低め・標準・高めの3通りを作り、3年以内の候補校だけ実額を調べる。
- 準備済み額と受給決定済みの支援だけを引き、不足額を残り月数で割る。
- 続けられる月額で最初の自動振替を設定し、毎年3月と進路変更時に見直す。