子育て費を見直したい。でも、子どもの楽しみや学ぶ機会まで減らしたくない。そんな家庭は、習い事をすぐにやめるのではなく、制度の申請漏れと支出の重複から確認しましょう。
この記事では、父、母、小学3年生、4歳児の4人家族を例にします。家族構成も金額も説明用の架空モデルです。全国平均や、どの家庭でも同じように減らせる金額ではありません。
この例で実際に減る支出は年14万4,000円です。さらに、受給中の児童手当から年6万円を教育用口座へ移します。合わせて「家計改善20万4,000円相当」ですが、6万円は節約ではなく、使い道を変えた貯蓄です。最初から分けて考えると、家計の変化を大きく見せずに済みます。
実例の前提と手順1:子育て費を年額で見える化する
モデル家庭には、次の悩みがありました。
- 小学3年生は、学習塾、通信教材、英会話を利用している
- 4歳児は、認定こども園と体操教室を利用している
- 教材やドリルを買うが、使い切れない物がある
- 児童手当は日常の口座へ入り、使い道を決めていない
- 医療費助成は使っているが、就学援助は調べたことがない
- 習い事を減らすと、子どもが遅れるのではないかと不安がある
問題は、ぜいたくをしていることではありません。毎月の習い事、年に数回の学校費、国や自治体の支援が同じ家計の中に混ざり、全体が見えないことでした。
総務省統計局は、子どもの学習費を「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」の合計として整理しています。学校外活動費には、学習塾、スポーツ、芸術活動などが含まれます。保護者が子供のために支出した教育費を参考に、この3分類で明細を集めると漏れを減らせます。
見える化は、次の順番で進めます。
- 直近3か月の通帳、カード明細、現金の記録を集める
- 学校、給食、塾、教材、習い事に印を付ける
- 月払いは12倍し、年払いはそのまま記入する
- 季節講習、教材費、行事費、道具代も足す
- 返金や助成は、支出と別の列へ書く
モデル家庭が年額に直した結果は、次のとおりです。
| 項目 | 見直し前の年額 | 目的と気づき |
|---|---|---|
| 小学生の学習塾 | 144,000円 | 算数と国語。季節講習は別 |
| 小学生の通信教材 | 48,000円 | 塾と国語・算数が重なる |
| 小学生の英会話 | 96,000円 | 本人が会話を楽しんでいる |
| 4歳児の体操教室 | 72,000円 | 本人が毎週楽しみにしている |
| 教材・ドリルの追加購入 | 36,000円 | 未使用分が残っている |
| 学校用品・行事の予備費 | 60,000円 | 支払う月にばらつきがある |
| 合計 | 456,000円 | 月平均38,000円 |
参考として、文部科学省の令和5年度子供の学習費調査(結果のポイント)では、公立小学校の学習費総額は子ども1人当たり年36万6,599円です。内訳は学校教育費7万4,336円、学校給食費3万5,774円、学校外活動費25万6,489円です。
ただし、これは調査対象世帯の平均です。モデル家庭の金額が適正か、いくら減らせるかを決める基準ではありません。平均と競うのではなく、自分の家庭で目的が重なっている支出を探します。
手順2:削る前に、申請漏れと対象外費用を確認する
制度を使えるなら、子どもの活動を減らさずに負担を軽くできる可能性があります。まず、各制度を「受給中」「要申請」「対象外」「確認待ち」の4つに分けます。
| 制度 | 主な確認先 | このモデルで確認すること | 結果の例 |
|---|---|---|---|
| 児童手当 | 市区町村 | 受給額、支給月、出生・転入時の申請 | 受給中 |
| こども医療費助成 | 市区町村 | 対象年齢、自己負担、所得条件、利用方法 | 受給中 |
| 幼児教育・保育の無償化 | 園、市区町村 | 対象となる利用料、別に払う費用、必要な認定 | 対象内訳を確認 |
| 就学援助 | 学校、教育委員会 | 認定基準、対象費目、申請時期 | この例では対象外 |
| 自治体の学習支援 | 市区町村 | 対象学年、費用、申込方法 | 無料学習会を確認 |
児童手当は、2026年7月27日に確認したこども家庭庁の制度案内では、3歳未満が1人月1万5,000円です。3歳以上から高校生年代までの第1子・第2子は1人月1万円、第3子以降は月3万円です。第3子以降の数え方には条件があります。
支給は2月、4月、6月、8月、10月、12月に行われ、それぞれ前月分までの2か月分です。出生や転入では原則として申請が必要です。申請が遅れると、遅れた月分を受け取れない場合があります。金額や手続きは変わる可能性があるため、2026年7月27日時点の公式案内と、居住する市区町村の最新情報を確認してください。
このモデルの2人が第1子・第2子で、どちらも3歳以上なら、児童手当は月合計2万円、年24万円になる単純計算です。ただし、個別の受給資格を保証する計算ではありません。
幼児教育・保育の無償化も、園からの請求がすべて0円になる制度ではありません。幼児教育・保育の無償化概要によると、対象施設を利用する3歳から5歳までの利用料は無償化の対象です。一方、通園送迎費、食材料費、行事費などは原則として保護者が負担します。施設や利用方法によって認定や手続きも異なります。園の請求書を「対象」「対象外」「不明」に分け、不明な費目を園へ確認しましょう。
こども医療費助成は自治体の制度です。こども家庭庁の令和7年度「こどもに係る医療費の助成についての調査」では、2025年4月1日時点で全都道府県・市区町村が実施していました。ただし、対象年齢などは実施する自治体で違います。所得制限、自己負担、窓口での使い方も、居住自治体の最新案内で確かめます。
就学援助は、経済的な理由で就学が難しいと認められる家庭を市町村が支援する制度です。文部科学省の就学援助ポータルには、学用品費、学校給食費、修学旅行費、オンライン学習通信費などの対象品目が示されています。準要保護者(生活保護を受ける家庭に準ずると市町村が認める人)の基準は、市町村ごとに定められます。年収だけで自己判断せず、学校か教育委員会で基準、費目、締切を確認してください。
対象外だった制度を調べることも無駄ではありません。申請漏れへの不安が消え、次に見直す支出がはっきりします。
手順3・4:教材と習い事を目的で分け、契約を確認する
金額が高い順にやめると、子どもが大切にしている活動まで失うことがあります。各項目を「目的」「利用」「重複」の3点で見ます。
- 子どもが何を得たいのかを書く
- 直近3か月の利用回数を書く
- 同じ目的の教材や習い事がないか探す
- 3か月後に確認する変化を1つ決める
- 「残す」「条件変更を相談」「3か月試す」「休止候補」に分ける
モデル家庭では、英会話を残しました。本人が会話そのものを楽しみ、ほかの活動と目的が重ならないためです。体操教室も、運動の機会と楽しみの両方を満たすため残しました。
一方、塾、通信教材、追加ドリルは、算数と国語の基礎という目的が重なっていました。そこで、通信教材は退会候補にします。追加ドリルは、家にある未使用分を終えるまで買いません。塾は週2回から週1回へ変え、算数だけを残せるか相談します。
子どもには、次のように伝えます。
「勉強をやめる話ではないよ。同じ算数と国語が3つ重なっているから、いちばん分かりやすい方法を一緒に選びたい。楽しいと言っていた英会話は続けよう」
大切なのは、「全部減らす」ではなく「大切なものを残すために、重複を整える」と伝えることです。
ただし、退会を決めた月から年額がそのまま減るとは限りません。申込み前の広告ではなく、契約書と現在の事業者案内で、次の項目を確認します。
- 契約期間と更新日
- 退会を申し出る締切
- 月謝や受講料の前払い分
- 教材費と、退会後の教材の扱い
- 休会、回数変更、科目変更の有無
- 中途解約時の精算や違約金
消費者庁の特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」では、語学教室、家庭教師、学習塾などのうち、期間と契約総額などの要件を満たす契約について、書面や中途解約のルールを案内しています。学習塾などでは、2か月を超え、受講料や教材費などを含む総額が5万円を超える契約が対象として示されています。
すべての通信教材や習い事に同じルールが当てはまるわけではありません。契約内容によって適用が変わります。困ったときは、契約書を手元に置いて事業者へ確認します。
手順5〜7:学用品を確認し、家計を変えて3か月後に見直す
学用品は、安い物を早く買えばよいとは限りません。指定と違えば、買い直しになります。次の順番なら、不要な購入を避けやすくなります。
- 学校の必要品一覧を受け取る
- 指定品か、市販品でもよいかを確認する
- 学校備品、貸与、レンタルがあるかを聞く
- 家にある物や、きょうだいから使える物を探す
- 学校などの譲渡会があれば、状態を確かめる
- 足りない物だけを買う
文部科学省は、保護者負担を軽くする取組例として、算数セット、彫刻刀、裁縫セットなどの学校備品化や、制服レンタルを紹介しています。学校における補助教材及び学用品等に係る保護者等の負担軽減については、学校へ確認する項目を考える材料になります。
ただし、すべての学校に備品、貸与、レンタル、譲渡会があるわけではありません。このモデルでは学校・PTAの年1回の譲渡会がある設定とし、学校用品・行事の予備費を年1万2,000円減らせる見込みにしました。全国共通の削減額ではありません。ヘルメットなど、安全性が状態に左右される物は、学校やメーカーの案内を優先します。
見直し後の計算は、次のようになります。
| 項目 | 見直し前 | 見直し後 | 年間差額 |
|---|---|---|---|
| 学習塾 | 144,000円 | 84,000円 | 60,000円 |
| 通信教材 | 48,000円 | 0円 | 48,000円 |
| 英会話 | 96,000円 | 96,000円 | 0円 |
| 体操教室 | 72,000円 | 72,000円 | 0円 |
| 追加教材・ドリル | 36,000円 | 12,000円 | 24,000円 |
| 学校用品・行事の予備費 | 60,000円 | 48,000円 | 12,000円 |
| 合計 | 456,000円 | 312,000円 | 144,000円 |
支出の減少は、6万円、4万8,000円、2万4,000円、1万2,000円の合計で年14万4,000円です。実際の削減額は、退会日や教材費の精算後に確定します。
児童手当は、節約額へ足しません。この家庭では、偶数月の支給後に1万円を教育用口座へ移すルールにします。年6回なら、年6万円が教育用として残ります。金融機関によって自動振替の可否や手数料が異なるため、設定前に確認します。
| 家計の変化 | 年額 | 家計簿での記録 |
|---|---|---|
| 支出が減った金額 | 144,000円 | 節約額 |
| 児童手当から教育用口座へ移す金額 | 60,000円 | 貯蓄への振替 |
| 家計改善の合計 | 204,000円相当 | 2つを分けて表示 |
実行は30日に分けると進めやすくなります。
- 1週目:3か月分の明細を集め、すべて年額へ直す
- 2週目:自治体、学校、園で制度と対象費目を確認する
- 3週目:親子で目的を話し、残す活動と重複を選ぶ
- 4週目:契約変更を申し込み、教育用口座への振替日を決める
3か月後には、実際の引落額を見ます。塾を減らした場合は、テストの点だけで判断しません。授業の理解、宿題にかかる時間、本人の困りごと、利用頻度も確認します。学習上の困りごとが強い場合は、節約だけで解決しようとせず、学校の先生などへ相談してください。
うまくいかなければ、元の契約へすぐ戻す前に中間案を探します。休会、回数の調整、学校や自治体の学習支援、単元ごとの短期教材などがあります。子どもが強く続けたい活動は、ほかの重複を減らす方法も考えます。
よくある質問
児童手当を教育用口座へ移したら、節約額に入れてよい?
受給中の児童手当を別の口座へ移すだけなら、収入が増えたわけでも、支出が減ったわけでもありません。「貯蓄への振替」として記録します。節約額とは分けましょう。
幼児教育・保育の無償化なら、園の費用はすべて無料?
すべてではありません。3歳から5歳までの対象施設の利用料は無償化の対象です。一方、通園送迎費、食材料費、行事費などは原則として保護者負担です。利用する施設や形態によって、認定や手続きも異なります。
就学援助は、収入がいくら以下なら受けられる?
全国一律の金額では答えられません。準要保護者の認定基準は各市町村が定めます。対象費目、支給額、申請時期も、学校や教育委員会の最新案内で確認してください。
塾や英会話は、やめると決めた月から全額減らせる?
契約によります。退会締切、前払い、教材費、休会や科目変更、中途解約時の精算を先に確認します。一定の要件を満たす学習塾や語学教室は特定商取引法の対象になる場合がありますが、全習い事に一律で当てはまるわけではありません。
年20万円減らせない家庭は、見直しに失敗したことになる?
なりません。20万4,000円相当は、架空モデルの計算です。しかも、支出減は14万4,000円で、6万円は貯蓄への振替です。申請漏れや未使用教材をなくし、必要な活動を続けやすくすることも成果です。
公式一次情報
確認日: 2026-07-27
- 児童手当制度のご案内|こども家庭庁: 対象、月額、支給月、申請手続きが掲載されています。
- 幼児教育・保育の無償化概要|こども家庭庁: 無償化の対象となる利用料と、送迎費・食材料費・行事費などの対象外費用が説明されています。
- 令和7年度「こどもに係る医療費の助成についての調査」|こども家庭庁: 自治体が行うこども医療費助成の実施状況と対象年齢がまとめられています。
- 就学援助制度について|文部科学省: 市町村が定める認定基準と、学用品費や給食費などの対象品目が説明されています。
- 令和5年度子供の学習費調査(結果のポイント)|文部科学省: 学校種・公私別の学習費と、学校教育費・給食費・学校外活動費の内訳が掲載されています。
- 保護者が子供のために支出した教育費|総務省統計局: 学習費の分類と、学校外活動費に含まれる支出が説明されています。
- 学用品等に係る保護者負担の軽減について|文部科学省: 学校備品化、指定品の低価格化、制服レンタルなどの取組例が紹介されています。
- 特定継続的役務提供|消費者庁 特定商取引法ガイド: 一定の学習塾や語学教室などに関する契約書面と中途解約のルールが説明されています。
まとめ
子育て費の見直しは、子どもの楽しみを片っ端から削る作業ではありません。制度の申請漏れ、同じ目的の重複、契約条件を順番に確認すれば、必要な学びを残しながら家計を整えられます。
まずは、次の3つを実行してください。
- 直近3か月の学校費、給食費、教材費、習い事を1枚に集め、年額へ直す
- 自治体、学校、園の最新案内を見て、制度を「受給中・要申請・対象外・確認待ち」に分ける
- 退会前に契約条件を確認し、支出減と貯蓄への振替を別々に記録する
年20万円に届くことを目標にする必要はありません。月3,000円の重複をなくせば、年3万6,000円です。「未使用教材が減った」「確認作業が減った」「子どもが選んだ活動を続けられた」も、家計を長く整えるための大切な成果です。