節約術

災害・盗難時の雑損控除|被害直後から申告まで

災害や盗難で住宅・家財に損害を受けた家庭向けに、雑損控除の対象、証拠の残し方、控除額の計算、災害減免法との比較、申告手順を解説します。

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申告書と懐中電灯、伏せた写真と救急箱

この記事で分かること

災害や盗難で住宅・家財に損害を受けた家庭向けに、雑損控除の対象、証拠の残し方、控除額の計算、災害減免法との比較、申告手順を解説します。

地震や水害、火災、盗難で暮らしに必要な財産を失ったとき、家計を立て直す手段は保険だけではありません。一定の条件を満たす損失は、確定申告で「雑損控除」という所得控除を受けられる場合があります。

ただし、壊れた物の購入額がそのまま戻る制度ではありません。対象となる資産と原因が決まっています。保険金などで補てんされた分も差し引きます。

この記事では、被害に気付いた直後の記録から、控除額の計算、確定申告までを順番に説明します。先に安全を確保し、片付けや修理で状態が変わる前に証拠を残すことが大切です。

時間がないときは、まず「安全の確保」「片付け前の撮影」「領収書や通知書の保管」の三つだけ進めてください。控除額の計算は、証拠を集めてからでも間に合います。

雑損控除は「税金を計算する前の所得」を減らす制度

雑損控除は、災害、盗難または横領によって「生活に通常必要な資産」に損害を受けたときに使える所得控除です。所得控除とは、税金を計算する前の所得から一定額を差し引く仕組みです。

控除額と実際の還付額は同じではありません。還付額は、課税される所得、税率、すでに源泉徴収された税額などで変わります。

国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」では、対象となる原因や資産、二つの計算式、申告方法が案内されています。

対象になりやすい物と、原則として対象外になる物を整理すると、次のようになります。

分類注意点
対象になり得る資産自宅、日常生活で使う家具・家電・衣服所有者、用途、被害原因などを確認する
対象になり得る車両通勤や送迎など生活に必要な車保有目的や使い方を含めて判断される
原則として対象外事業用資産、棚卸資産、別荘生活用と事業用が混ざる場合は按分(=用途ごとに分けること)の確認が必要
生活に通常必要でない資産趣味・娯楽・保養・鑑賞用の資産1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨董なども含まれる

資産の所有者は、納税者本人だけとは限りません。生計を一にする配偶者や親族の資産も、所得要件などを満たせば対象になり得ます。令和7年分では、その親族の総所得金額等が58万円以下であることが要件です。令和2年分から令和6年分までは48万円以下なので、申告する年分を混同しないようにします。

原因は、地震・風水害・雪害・落雷などの自然災害、火災や爆発などの異常な災害、害虫などによる異常な災害、盗難、横領です。一方、詐欺や恐喝による損失は対象外です。国税庁「詐欺による損失」でも、詐欺による損失は雑損控除の対象にならないと説明されています。盗難と詐欺は税務上の扱いが違います。

生活用と事業用が混ざる住宅や車、高額品は、一般的な例だけで判断しにくい分野です。資産の用途や使った割合が分かる記録を用意し、税務署または税理士へ確認しましょう。

被害直後は安全を確保し、片付け前に写真を残す

災害時は、避難、けがの手当、二次被害の防止を先に行います。危険な建物へ撮影のために戻ってはいけません。安全を確認できた後で、片付けや修理を始める前の状態を残します。

内閣府の「実施体制の手引き 第9章」では、家の外と中を片付け・修理前に撮影する方法が示されています。次の順で撮ると、被害の全体と細部を説明しやすくなります。

  1. 家の外観を、できるだけ四つの方向から撮ります。
  2. 室内は、部屋ごとの全景を撮ります。
  3. 壊れた箇所や被害品へ近づき、状態が分かる写真を撮ります。
  4. 浸水した場所は、メジャーなどを当てます。周囲も写る遠景と、目盛りを読める近景の両方を残します。
  5. 家財は、品名、数量、メーカー、型番、購入時期を一覧にします。
  6. 写真や動画を複製し、被害日と場所が分かる名前で保存します。

写真だけでなく、購入履歴、保証書、決済明細、取扱説明書、修理見積書も集めます。購入時のレシートがなくても、型番や購入履歴が価額を考える手掛かりになります。

災害では、住んでいる自治体へ罹災証明書の申請方法を確認します。罹災証明書は、住家の被害程度を「全壊」「半壊」などとして市町村が証明する書面です。内閣府の「罹災証明書の交付について」でも、その役割が説明されています。

罹災証明書だけで、税務上の損害金額や家財の被害額がすべて決まるわけではありません。住家の被害程度、個々の家財の損害、支払った費用、受け取る保険金は別々に記録します。応急危険度判定の「危険」も、罹災証明書の「全壊」「半壊」と同じ意味ではありません。

盗難に気付いたら、管轄する警察へ相談します。警視庁の「被害届を出したい」では、東京都内について各警察署・交番で受理できると案内しています。受付方法や必要な情報は地域や事件によって異なるため、所在地を管轄する警察へ確認してください。

相談後は、被害品、発覚した日、被害が起きたと考えられる場所、届出先、届出日時を自分の記録に残します。受理番号などが案内された場合は、それも控えます。

損害額と保険金を分け、二つの式で計算する

計算前に、お金を次の三つへ分けます。

  • 損害金額:被害を受ける直前の資産の時価を基にした損害額
  • 災害等関連支出:取壊し、除去、盗難・横領による原状回復など、一定のやむを得ない支出
  • 保険金等:保険金、共済金、損害賠償金など、損害を補てんする金額

新品への買い直し額を、そのまま損害金額にはできません。損害直前の時価が基本です。保険金等は、まず損害金額から差し引きます。保険金等が損害金額を上回るときは、その上回る分を災害等関連支出から差し引きます。

個々の損失額を計算することが難しい場合には、国税庁の「損失額の合理的な計算方法」を使えることがあります。住宅、家財、車両ごとに計算方法と利用条件があります。レシートがないという理由だけで使うのではなく、写真や購入記録を集めたうえで条件を確認します。

雑損控除額は、次の二つを計算し、大きい方を使います。

計算1=(損害金額+災害等関連支出-保険金等)-総所得金額等×10%

計算2=(災害関連支出-対応する保険金等)-5万円

二つの式に出てくる言葉の範囲は同じではありません。計算1の「災害等関連支出」には、盗難や横領で被害を受けた資産の原状回復費用が含まれる場合があります。計算2の「災害関連支出」は、災害で滅失した住宅や家財の取壊し・除去費用などです。盗難・横領の原状回復費用を、計算2へそのまま入れないようにします。

土砂の除去など、一定の原状回復支出には支払った時期の条件もあります。原則は災害がやんだ日から1年以内です。大規模な災害の場合などは3年以内です。すべての関連費用に同じ期限を当てはめず、支出の内容と発生年分を確認してください。

国税庁の例で検算する

令和7年分の確定申告手引きには、次の計算例があります。

項目金額
損害金額(災害関連支出28万円を含む)580万円
保険金などで補てんされる金額480万円
所得金額817万400円
災害関連支出28万円

この手引きの記入例では、損害金額580万円に災害関連支出28万円が含まれています。そのため、計算1で28万円をもう一度足しません。

  1. 差引損失額は、580万円-480万円=100万円です。
  2. 所得金額の10%は、817万400円×10%=81万7,040円です。
  3. 計算1は、100万円-81万7,040円=18万2,960円です。
  4. 計算2は、28万円-5万円=23万円です。
  5. 大きい方を選ぶため、雑損控除額は23万円です。

この23万円は、所得から差し引く金額です。23万円がそのまま振り込まれるわけではありません。

確定申告までの5手順

  1. 被害原因を、災害、盗難、横領に分けます。生活用、事業用、対象外の資産も分けます。
  2. 写真、型番、購入記録、使用年数を基に、被害直前の時価から損害金額を見積もります。
  3. 取壊し、除去、原状回復などの支出と、保険金等を別々に集計します。
  4. 二つの式で控除額を計算します。災害の場合は、災害減免法も試算します。
  5. 確定申告書へ雑損控除に関する事項を記載します。災害等に関連してやむを得ず支出した金額の領収書は、添付または提示できるようにします。

損失が大きく、その年の所得から控除しきれないときは、翌年以後3年間に繰り越せる場合があります。東日本大震災、または令和5年4月1日以後に発生した特定非常災害による損失は、5年間となる場合があります。指定の有無を災害名だけで判断せず、発生年分と翌年以後に必要な申告を国税庁または税務署へ確認します。

災害なら災害減免法とも比べる

災害によって住宅や家財に大きな損害を受けた場合は、雑損控除とは別に災害減免法を選べることがあります。同じ災害による損失について、両方を重ねて使う制度ではありません。条件を満たす場合に、有利な方を選びます。

国税庁「災害減免法による所得税の軽減免除」が示す主な条件は、次のとおりです。

  • 災害による住宅または家財の損害である
  • 保険金等を差し引いた損害額が、その住宅または家財の時価の2分の1以上である
  • その年の所得金額の合計額が1,000万円以下である

所得金額の合計額が500万円以下なら所得税の全額、500万円を超え750万円以下なら2分の1、750万円を超え1,000万円以下なら4分の1が軽減または免除されます。これは2026-07-27時点で確認した公式案内です。申告する年分の最新情報を公式ページで確かめてください。

雑損控除は所得から差し引く制度です。災害減免法は所得税額を軽減または免除する制度です。所得、損害額、災害関連支出、保険金等によって有利な方が変わります。

盗難や横領は、災害減免法の対象ではありません。盗難や横領による損失では、雑損控除の条件を確認します。

よくある質問

レシートがなくても雑損控除を申告できますか?

レシートがないだけで、一律に対象外になるとは限りません。被害前後の写真、型番、購入履歴、保証書、決済明細などを集めます。個々の計算が難しく、国税庁の条件を満たす場合は、住宅・家財・車両の合理的な計算方法を検討します。

罹災証明書があれば損害金額は確定しますか?

罹災証明書は、住家の被害程度を市町村が証明する書面です。税務上の個々の損害金額や、家財すべての被害額を自動的に確定する書面ではありません。写真、家財一覧、購入記録、見積書、領収書、保険金の通知も保管します。

盗難と詐欺は同じように対象になりますか?

同じではありません。盗難と横領は対象となる原因に含まれます。詐欺や恐喝による損失は、雑損控除の対象外です。

雑損控除額と還付額は同じですか?

同じではありません。雑損控除額は、税金を計算する前の所得から差し引く金額です。所得税がどれだけ減るかや、還付される金額は、税率や源泉徴収済みの税額などで変わります。

雑損控除と災害減免法は両方使えますか?

同じ災害による損失について両方を重ねて使うのではなく、有利な方を選びます。災害減免法には、住宅・家財の損害割合と所得の条件があります。盗難や横領には使いません。

公式一次情報

確認日: 2026-07-27

まとめ

被害の直後から控除額を決めようとすると、記録の抜けが起きやすくなります。安全確保、証拠の保存、金額の整理、制度の比較、申告の順で進めましょう。

  • 安全を確保してから、片付け・修理前の外観、各部屋、被害箇所、浸水の高さを撮影する
  • 写真、被害品一覧、領収書、見積書、保険金の通知を、紙とデータの一か所へ集める
  • 生活用と事業用が混ざる資産や判断しにくい費用は、資料をそろえて税務署または税理士へ確認する