勤務先から年末調整の案内が届いたら、前年の内容をそのまま写す前に手を止めましょう。2026年分(令和8年分)は、基礎控除や給与所得控除、扶養親族などの所得要件が変わります。
年末調整は、毎月の給与から引かれた所得税と、その年に納める所得税の差を勤務先が精算する手続きです。ただし、会社が家族の収入や、自分で払った保険料をすべて把握しているわけではありません。必要な申告書や証明書を出さないと、受けられる控除が計算に入らないことがあります。
漏れを防ぐ順番は、**「今年の変化を書く→証明書を集める→申告先を分ける→提出後に確認する」**です。税金の計算式を暗記する必要はありません。この記事の表と手順に沿って、一つずつ確認してください。
2026年の年末調整は前年の数字を写さない
2026年度の税制改正は、原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。2026年11月までの毎月の源泉徴収(給与から所得税を先に引くこと)は従来どおり進み、12月の年末調整で改正後の年税額へ精算されます。詳しくは国税庁の令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等についてで確認できます。
2026年分の主な変更点は次のとおりです。
- 基礎控除は、本人の合計所得金額に応じて変わり、最大104万円になります。
- 給与所得控除(給与収入から一定額を差し引く仕組み)の最低保障額は、74万円になります。
- 扶養親族などの所得要件は、合計所得金額62万円以下へ変わります。
- 特定親族特別控除の対象となる所得の範囲も変わります。
これらは2026年7月27日時点の国税庁資料に基づく内容です。国税庁は、2026年分の詳しい「年末調整のしかた」などを2026年8月末ごろに掲載する予定と案内しています。提出時は、国税庁の最新資料と勤務先から配られた2026年分の様式を確認してください。
最初に、今年変わったことを表へ当てはめます。
| 今年あったこと | 主に確認するもの | 最初にすること |
|---|---|---|
| 結婚、離婚、出産 | 配偶者・扶養・ひとり親などの欄 | 家族の状況と所得見積額を書く |
| 子どもの就職、退職、アルバイト | 扶養控除、特定親族特別控除 | 給与収入と他の所得を分けて確認する |
| 生命保険や地震保険の加入・変更 | 保険料控除申告書 | 紙と電子の控除証明書を探す |
| 転職前に国民年金を自分で払った | 社会保険料控除 | 控除証明書か領収証書を用意する |
| iDeCoを始めた、払込方法を変えた | 小規模企業共済等掛金控除 | 個人払込か事業主払込か確認する |
| 住宅を買って入居した | 住宅ローン控除 | 初年度か2年目以後かを分ける |
| 医療費や寄附があった | 確定申告側の控除 | 年末調整の書類とは別に保管する |
申告書の法定の提出時期は、その年最後に給与の支払いを受ける日の前日までとされています。ただし、勤務先は確認や計算のため、それより早い社内期限を設けることがあります。先に勤務先の締切日と提出方法をメモしましょう。
家族の変化と2026年の所得見積額を確認する
家族に関する控除は、前年の情報を写すと漏れや誤りが起きやすい項目です。結婚、離婚、出産、就職、退職、同居、別居がなかったかを書き出してください。本人についても、障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生などに該当する可能性がないか確認します。
次に、配偶者や扶養親族の2026年中の所得を見積もります。ここで注意したいのが、給与収入と合計所得金額は同じではないことです。
2026年分は、扶養親族や同一生計配偶者などの所得要件が、合計所得金額62万円以下になります。収入が給与だけで、特定支出控除がない場合は、給与収入136万円以下に対応します。数値の関係は、国税庁の令和8年4月 源泉所得税の改正のあらましに掲載されています。
ただし、「給与収入が136万円以下なら扶養に入れる」と一つの数字だけで決めてはいけません。年齢、親族関係、生計を一にしているかなど、ほかの要件もあります。給与以外の所得があれば、それも含めて確認します。
19歳以上23歳未満の親族については、特定親族特別控除に該当する可能性があります。2026年分は、特定親族の合計所得金額が62万円超123万円以下、収入が給与だけなら136万円超197万円以下に対応します。控除額は所得に応じて変わり、最高63万円です。
家族の確認は、次の順番で進めます。
- 家族ごとに、2026年中の勤務先と給与明細を確認する。
- 年末までの給与や賞与を足し、給与収入の見込みを出す。
- アルバイト以外の所得がないか本人へ確認する。
- 申告書の判定欄や2026年分の記載例に当てはめる。
- 境目に近い場合や判断に迷う場合は、勤務先の担当者へ早めに相談する。
基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除などを年末調整で受けるには、対応する申告書を給与の支払者へ提出します。2026年7月27日時点では、一部の入力用PDFや記載例に準備中の表示があります。提出直前に国税庁の基礎控除、配偶者控除等の申告案内を開き、最新版を使ってください。
保険・年金・iDeCo・住宅ローンを支払い方別に拾う
給与明細に載っていない支払いは、自分から申告しないと勤務先が気づきにくい項目です。支払先ごとではなく、「誰が実際に払ったか」と「証明書があるか」で整理します。
生命保険料と地震保険料
生命保険料控除では、一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の区分を確認します。区分は契約名から推測せず、保険会社が発行した控除証明書で確認してください。地震保険料も同じ申告書で扱います。
2026年分と2027年分は、一定の23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料にかかる一般生命保険料控除の上限が6万円になります。生命保険料控除全体の合計上限は12万円です。対象になるかと計算方法は、2026年7月27日時点の国税庁保険と税で確認してください。
払った保険料が、そのまま税金から引かれるわけではありません。生命保険料控除は、税金を計算する基になる所得から一定額を差し引く所得控除です。「支払額」「所得から差し引く控除額」「実際に減る税額」「還付額」は、それぞれ別の金額です。
自分で払った国民年金保険料
転職前や学生だった期間に、自分で国民年金保険料を払っていないか確認しましょう。給与から引かれていない社会保険料は、給与明細だけを見ても拾えません。
国民年金保険料の社会保険料控除を受けるときは、控除証明書または領収証書が必要です。日本年金機構の電子送付対象通知書一覧では、控除証明書の役割と電子データの利用について案内しています。家族分を払った場合は、誰の保険料を誰が負担したかを整理し、対象になるか勤務先や税務署へ確認してください。
iDeCoの掛金
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、払込方法で手続きが分かれます。
- 事業主払込:給与から掛金が差し引かれ、勤務先が源泉徴収へ反映するため、原則として本人の申告手続きは不要です。
- 個人払込:小規模企業共済等掛金払込証明書の金額を保険料控除申告書へ書き、勤務先へ提出します。
払込方法が分からない場合は、給与明細と証明書の有無を確認します。手続きの違いは、iDeCo公式サイトのiDeCoのライブラリで案内されています。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、控除を初めて受ける年と2年目以後で手続きが違います。
- 初年度:年末調整ではなく、本人が確定申告をします。
- 2年目以後:給与所得者は、必要書類を勤務先へ出すと年末調整で適用を受けられます。
2年目以後は、住宅借入金等特別控除申告書や年末残高等証明書などを確認します。紙だけでなく、電子交付されていないかも探してください。
住宅の種類、居住を始めた年、床面積、所得などで要件が変わります。2026年中に居住を始めた人は、国税庁のマイホームを持ったときで、2026年7月27日時点の対象要件を確認してください。住宅ローン控除は、一定の要件のもとで所得税額から差し引く税額控除です。生命保険料控除とは仕組みが異なります。
提出前に照合し、提出後の漏れも順番に直す
年末調整へ出すものと、確定申告へ回すものを混ぜないようにします。医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度は、原則として年末調整では扱いません。
医療費を集計する手順は医療費控除のやり方で確認できます。ふるさと納税の手続きはふるさと納税ワンストップ特例の手順も参考にしてください。
年末調整に入らない控除があっても、勤務先の年末調整書類を出さなくてよいわけではありません。まず年末調整を済ませます。その後、必要な人が源泉徴収票を使って確定申告します。
提出前15分チェック
- 勤務先の提出期限と提出方法を確認した
- 結婚、離婚、出産、家族の就職・退職を確認した
- 配偶者・扶養親族の2026年の所得見積額を確認した
- 基礎控除などの申告書に未入力の必須欄がない
- 生命保険料と地震保険料の証明書を紙と電子で探した
- 給与天引き以外で払った国民年金保険料を確認した
- iDeCoは個人払込か事業主払込か確認した
- 住宅ローン控除は初年度か2年目以後かを分けた
- 医療費や寄附金などを確定申告用のメモへ移した
- 提出した申告書、添付書類、受付結果の控えを保存した
証明書が見つからないときは、紙の郵便、登録メール、発行元の会員ページの順に探します。マイナポータル連携を使う場合は、年末調整の事前準備が必要です。対応する発行主体も変わる可能性があります。マイナポータルの年末調整で連携できる発行主体についての案内から、公開時点の一覧を確認してください。
マイナポータルで電子データを取得できることと、勤務先がそのデータを受け付けられることは別です。勤務先が電子提出に対応していなければ、発行元の正規の手順で紙の再発行を依頼します。
提出後は源泉徴収票で答え合わせする
源泉徴収票を受け取ったら、次の項目を確認します。
- 配偶者や扶養親族に関する表示
- 生命保険料・地震保険料の控除額
- 社会保険料等の金額
- 住宅借入金等特別控除の額
申告した項目が反映されていないときは、次の順番で動きます。
- まず勤務先へ連絡し、年末調整を訂正できるか確認する。
- 訂正できる場合は、勤務先の指示どおりに差し替える。
- 勤務先で直せない場合は、確定申告や還付申告を確認する。
所得税を納め過ぎていれば、還付申告で還付を受けられることがあります。確定申告義務のない人の還付申告は、原則として対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。詳しくは国税庁のNo.2030 還付申告を確認してください。
すでに申告した内容を直す場合は、同じ申告書を単純に出し直す手続きではありません。また、給与所得者が確定申告をする場合は、追加したい控除だけでなく、申告が必要な所得を含めて作成します。源泉徴収票と証明書をそろえ、その年分の国税庁の案内に沿って進めましょう。
よくある質問
2026年の年末調整は何が変わりますか?
基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族などの所得要件が変わります。2026年12月の年末調整では改正後の数字で精算されます。前年分の用紙や早見表をそのまま使わず、2026年分の国税庁資料と勤務先の案内を確認してください。
子どものアルバイト収入が136万円以下なら扶養に入れますか?
136万円以下は、2026年分において、収入が給与だけの場合に合計所得金額62万円以下へ対応する目安です。年齢、親族関係、生計など、ほかの要件もあります。給与以外の所得がある場合も、136万円だけでは判定できません。
23歳未満の扶養親族がいると生命保険料控除はいくらになりますか?
2026年分と2027年分は、一定の23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料にかかる一般生命保険料控除の上限が6万円になります。生命保険料控除全体の上限は12万円です。払った保険料がそのまま控除額や還付額になるわけではありません。
国民年金やiDeCoの証明書が見つからないときはどうしますか?
日本年金機構やiDeCo公式サイトで、再発行や電子交付の案内を確認します。マイナポータル連携を使う場合は、事前設定と発行主体の対応確認が必要です。電子データを勤務先へ出せるかは、勤務先にも確認してください。
年末調整後に控除漏れへ気づいたら手遅れですか?
まず勤務先へ訂正できるか確認します。勤務先で対応できず、所得税を納め過ぎている場合は、還付申告を検討します。確定申告義務のない人は、原則として対象年の翌年1月1日から5年間、還付申告書を提出できます。
公式一次情報
確認日: 2026-07-27
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」: 2026年分の基礎控除、給与所得控除、扶養親族などの所得要件の改正概要を確認できます。
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」: 改正後の金額と、給与収入だけの場合の対応額を表で確認できます。
- 国税庁「給与所得者の基礎控除、配偶者控除等の申告」: 申告書の提出先、提出時期、2026年分様式の案内を確認できます。
- 国税庁「給与所得者の保険料控除の申告」: 保険料控除申告書、必要な証明書、2026年分の注意点を確認できます。
- 日本年金機構「電子送付対象通知書一覧」: 国民年金保険料の控除証明書と電子データの扱いを確認できます。
- iDeCo公式サイト「iDeCoのライブラリ」: 事業主払込と個人払込で異なる年末調整の手続きを確認できます。
- マイナポータル「年末調整で連携できる発行主体についての案内」: マイナポータル連携の事前準備と、対応発行主体の確認先を案内しています。
- 国税庁「マイホームを持ったとき」: 住宅ローン控除の初年度と2年目以後の手続き、2026年中に入居した場合の要件を確認できます。
- 国税庁「No.2030 還付申告」: 所得税を納め過ぎた場合の還付申告と、原則5年間の提出期間を確認できます。
まとめ
年末調整の申告漏れを防ぐには、控除額の暗記よりも、確認する順番を決めることが大切です。2026年分は制度の数字が変わるため、前年の申告書をそのまま写さないでください。
- 勤務先の期限を確認し、家族・保険・住宅で今年変わったことを3行で書く
- 紙、メール、会員ページを探し、必要な控除証明書を一か所へ集める
- 年末調整と確定申告へ出すものを分け、提出後は源泉徴収票で反映を確認する