家族の収入が増えたときは、「扶養から外れるのでは」と不安になりがちです。しかし、年収の数字を一つだけ見ても判断できません。
相手が配偶者なら、配偶者控除か配偶者特別控除を確認します。子や親など、配偶者以外の親族なら、扶養控除か特定親族特別控除を確認します。健康保険の被扶養者や、会社独自の家族手当は別の制度です。
この記事では、2026年分の所得税を中心に整理します。2026年度の税制改正により、扶養親族と同一生計配偶者の合計所得金額の要件は62万円以下になりました。給与収入だけなら、136万円以下が目安です。
ただし、136万円はすべての家庭に使える線ではありません。副業、事業、不動産、公的年金などの所得がある人は、合計所得金額で判定します。
まず確認|配偶者・子や親・社会保険は別々に判定する
最初に、誰について、どの制度を調べるのかを分けましょう。
| 確認する相手・制度 | 主に見る控除や基準 | 2026年分の目安 |
|---|---|---|
| 法律上の配偶者 | 配偶者控除 | 配偶者の合計所得金額62万円以下 |
| 所得が62万円を超える配偶者 | 配偶者特別控除 | 配偶者の合計所得金額62万円超133万円以下 |
| 配偶者以外の親族 | 扶養控除 | 親族の合計所得金額62万円以下。控除対象は原則16歳以上 |
| 19歳以上23歳未満の親族 | 扶養控除または特定親族特別控除 | 親族の所得と年齢に応じて判定 |
| 健康保険の被扶養者 | 加入先の健康保険の基準 | 税の136万円とは分けて確認 |
| 会社の家族手当 | 勤務先の就業規則 | 会社ごとに確認 |
ここでいう「控除」は、お金がそのまま振り込まれる制度ではありません。所得税を計算する前の所得から、一定額を差し引く仕組みです。たとえば控除額が38万円でも、税金が38万円戻るという意味ではありません。
収入と所得は同じではない
給与だけの人は、給与収入から給与所得控除を引いた残りが給与所得です。2026年分と2027年分は、給与所得控除の最低保障額が74万円です。そのため、給与収入136万円から74万円を引くと、合計所得金額の目安である62万円になります。
136万円=合計所得金額62万円+給与所得控除74万円という関係です。
この計算は、収入が給与だけで、最低保障額が適用される場合の目安です。特定支出控除(仕事のための特別な支出に関する控除)や所得金額調整控除がある場合は、国税庁の表にある給与収入の目安と異なることがあります。
扶養控除は四つの条件を見る
配偶者以外の親族について扶養控除を受けるには、主に次の条件をすべて確認します。
- 配偶者以外の一定の親族、里子、養護を委託された老人などである
- 納税者と生計を一にしている
- 2026年の合計所得金額が62万円以下である
- 青色申告者の事業専従者として給与を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
「生計を一にする」とは、生活のお金を共にしている状態です。同居だけが条件ではありません。進学で別居している子や、離れて暮らす親でも、生活費や学費、療養費を継続して負担している場合は対象になり得ます。
反対に、同じ家に住んでいるだけで条件を満たすとは限りません。親族本人の所得や、生活費を誰が負担しているかも確認します。
国外に住む親族には、年齢などに応じた追加条件と確認書類があります。国内の親族と同じ感覚で申告せず、勤務先や税務署で必要書類を確認してください。
16歳未満の子には所得税の扶養控除がない
所得税の扶養控除を受けられる「控除対象扶養親族」は、原則として12月31日時点で16歳以上です。16歳未満の子には、所得税の扶養控除額がありません。
ただし、年末調整の申告書には「16歳未満の扶養親族」欄があります。住民税などの確認に使われるため、扶養控除がないことを理由に勝手に省略しないでください。
扶養控除額は、親族の年齢と同居状況で変わります。
| 区分 | 所得税の控除額 |
|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
| 19歳以上23歳未満の特定扶養親族 | 63万円 |
| 70歳以上の老人扶養親族(同居老親等以外) | 48万円 |
| 70歳以上の同居老親等 | 58万円 |
同居老親等は、納税者か配偶者の直系尊属で、普段から同居しているなどの条件を満たす人です。70歳以上の親族が全員58万円になるわけではありません。
配偶者控除は本人の所得制限もある
配偶者控除は、主に次の条件をすべて満たす場合に受けられます。
- 民法上の配偶者である。内縁関係は対象にならない
- 納税者と生計を一にしている
- 配偶者の2026年の合計所得金額が62万円以下である
- 配偶者が青色申告者の事業専従者として給与を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
- 控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円以下である
配偶者の収入が給与だけなら、136万円以下が所得要件の目安です。しかし、控除額は配偶者の年齢と、控除を受ける本人の所得でも変わります。
| 控除を受ける本人の合計所得金額 | 一般の配偶者 | 70歳以上の配偶者 |
|---|---|---|
| 900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
| 900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
| 950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
| 1,000万円超 | 0円 | 0円 |
2026年の金額を調べるときは、国税庁の令和8年4月 源泉所得税の改正のあらましを主な根拠にしてください。
国税庁の通常のタックスアンサーには、2026年7月27日時点で2025年分までの金額が残るページがあります。扶養控除や配偶者控除の基本条件を調べるには役立ちますが、2026年分の62万円や136万円は2026年専用の改正資料で確認するのが安全です。
136万円を超えたら|配偶者と大学生年代の特例を確認
給与収入が136万円を少し超えても、配偶者や大学生年代の親族に関する控除が直ちに0円になるとは限りません。
配偶者は207万円以下まで確認する
配偶者の合計所得金額が62万円を超えた場合は、配偶者特別控除を確認します。2026年分の対象範囲は、配偶者の合計所得金額が62万円超133万円以下です。給与収入だけなら136万円超207万円以下が目安です。
控除を受ける本人の合計所得金額は、1,000万円以下である必要があります。控除額は、本人と配偶者それぞれの合計所得金額によって段階的に変わります。
本人の合計所得金額が900万円以下の場合は、配偶者の合計所得金額が95万円以下なら、配偶者特別控除は38万円です。給与収入だけなら169万円以下が目安です。その後は配偶者の所得が増えるにつれて、控除額が少しずつ下がります。
夫婦が互いに配偶者特別控除を受けることはできません。同じ年に二重で使わないようにしてください。
19歳以上23歳未満は197万円以下まで確認する
12月31日時点で19歳以上23歳未満の親族は、合計所得金額が62万円以下なら、特定扶養親族として扶養控除63万円の対象になり得ます。
62万円を超えて扶養控除の対象外になっても、合計所得金額が123万円以下なら、特定親族特別控除を受けられる場合があります。給与収入だけなら、136万円超197万円以下が確認範囲です。
親族の合計所得金額が62万円超85万円以下なら、特定親族特別控除は63万円です。その後は所得が増えるにつれて減り、120万円超123万円以下では3万円です。
| 相手 | 通常の控除を超えた後に確認する制度 | 合計所得金額 | 給与収入だけの目安 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | 配偶者特別控除 | 62万円超133万円以下 | 136万円超207万円以下 |
| 19歳以上23歳未満の親族 | 特定親族特別控除 | 62万円超123万円以下 | 136万円超197万円以下 |
169万円、197万円、207万円も、収入が給与だけの場合の目安です。副業、事業、不動産、公的年金などがある場合は、収入を単純に足すのではなく、所得の種類ごとに計算した合計所得金額を使います。
税の扶養と社会保険の扶養|2026年の変更を混ぜない
ここまでの136万円は、2026年分の所得税で使う給与収入の目安です。健康保険の被扶養者や、厚生年金・健康保険への加入条件を示す数字ではありません。
社会保険では、約106万円や130万円という別の「年収の壁」が使われてきました。さらに、2026年には制度の扱いが変わる予定があります。税の控除だけを見て、世帯全体の手取りを決めないでください。
2026年4月からは労働契約による収入見込みも使う
日本年金機構の労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いでは、2026年4月1日以降の認定方法が案内されています。
労働条件通知書などから見込む年間収入が130万円未満で、ほかの収入が見込まれないなどの条件を満たす場合は、原則として被扶養者に該当する取扱いがあります。年間収入には諸手当や賞与も含まれます。
健康保険の年間収入基準は、原則130万円未満です。ただし、19歳以上23歳未満の配偶者以外の人は150万円未満です。60歳以上または一定の障害がある人は180万円未満です。税の「以下」と、健康保険の「未満」を取り違えないようにしましょう。
被扶養者の認定では、収入以外の条件も確認されます。最終的な必要書類と判断は、勤務先や加入先の健康保険へ確認してください。
一時的に収入が増えたときの特例もある
人手不足による残業などで一時的に収入が増えた場合は、事業主の証明を添えることで、引き続き被扶養者として認定されることがあります。協会けんぽの被扶養者の認定における特例についてでは、原則として連続2回までの取扱いなどが案内されています。
この特例は、恒常的に収入が増えた場合へ一律に使えるものではありません。加入先による確認が必要です。
「106万円の壁」は2026年10月の案内を確認する
短時間労働者が社会保険へ加入する条件のうち、月額8.8万円以上という賃金要件は、いわゆる106万円の壁と呼ばれます。
厚生労働省の「年収の壁」への対応では、この賃金要件は2026年10月に撤廃予定と案内されています。ただし、週の労働時間、勤務先の企業規模、学生かどうかなど、ほかの条件は別に確認が必要です。
制度は変わる可能性があります。2026年10月以降に判断する人は、その時点の厚生労働省と勤務先の案内を確認してください。
年末調整で迷わない手順|12月1日の改正と申告書を確認
2026年度改正は、原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。
ここで迷いやすいのは、2026年11月までの毎月の源泉徴収事務は変わらないという点です。11月までの給与から引かれる所得税がすぐ新しい表へ変わるわけではありません。
12月の年末調整で、改正後の基礎控除や給与所得控除などを使って1年分の税額を計算します。そして、11月までに源泉徴収された税額との差を精算します。国税庁の2026年度改正ページと改正Q&Aに、この流れが案内されています。
改正によって新たに扶養対象となる親族がいる場合は、扶養控除等(異動)申告書などを勤務先へ提出します。国税庁Q&Aでは、異動月日・事由欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載する例も示されています。
手元の2026年分の申告書に、改正前の58万円や123万円などが書かれている場合があります。その用紙だけで2026年分の要件を判断せず、2026年専用資料と勤務先の案内を確認してください。
年最後の給与が2026年11月30日以前で、勤務先の年末調整に改正後の控除が反映されない場合は、確定申告などが必要になることがあります。
家族ごとの確認は、次の順番で進めると迷いにくくなります。
- 紙か表計算ソフトに、家族一人につき一行の表を作る
- 「続柄」「12月31日時点の年齢」「給与収入」「給与以外の所得」「生計を一にする状況」「使えそうな控除」の六列を書く
- 相手が配偶者か、それ以外の親族かを分ける
- 給与明細、年金、事業、副業など、2026年中の収入資料を集める
- 給与所得控除や必要経費を反映し、合計所得金額を見積もる
- 19歳以上23歳未満なら、特定親族特別控除まで確認する
- 配偶者の所得が62万円を超えるなら、配偶者特別控除まで確認する
- 同じ親族を夫婦や兄弟で重複して扶養控除へ入れていないか確認する
- 改正で新たに対象になる人がいれば、勤務先へ申告書の提出方法を聞く
- 健康保険と会社の家族手当は、それぞれ別の窓口で確認する
給与明細の「支給額」を足すだけでは、非課税の通勤手当などの扱いを誤ることがあります。年の途中は見込みで整理し、源泉徴収票などがそろったら確定額を再確認しましょう。
よくある質問
配偶者の給与収入が136万円を少し超えたら、控除はすぐ0円になりますか?
すぐ0円になるとは限りません。2026年分は、給与収入だけなら207万円以下まで配偶者特別控除の対象になり得ます。
本人の合計所得金額が900万円以下なら、配偶者の給与収入が169万円以下に相当する範囲まで、38万円の配偶者特別控除を受けられる場合があります。その後は本人と配偶者の所得に応じて控除額が段階的に変わります。
ただし、健康保険の被扶養者は別の基準です。税だけで手取り全体を判断しないでください。
子どもの給与収入が136万円を超えたら、扶養控除はなくなりますか?
通常の扶養控除の所得要件からは外れます。ただし、12月31日時点で19歳以上23歳未満なら、特定親族特別控除を確認してください。
2026年分で給与収入だけなら、197万円以下まで対象になり得ます。健康保険では、同年代の配偶者以外の人に150万円未満という別の基準があります。
16歳未満の子どもは、年末調整の扶養欄に書かなくてよいですか?
所得税の扶養控除の対象は原則16歳以上なので、16歳未満の子に所得税の扶養控除はありません。
ただし、申告書の「16歳未満の扶養親族」欄は住民税などの情報にも使われます。記載が必要か、勤務先の案内を確認してください。
別居している親や子も扶養控除の対象になりますか?
別居だけで対象外になるわけではありません。親族関係、所得、年齢に加えて、生計を一にしている実態を確認します。
生活費や学費を送っている場合は、振込記録などを残しておくと確認しやすくなります。国外居住親族には追加条件と書類があります。
すでに2026年分の扶養控除等申告書を出している場合は、何をすればよいですか?
改正によって新たに扶養対象となる親族がいる場合は、その親族を記載した扶養控除等(異動)申告書などを勤務先へ提出します。
用紙や提出期限は勤務先によって異なります。年末まで放置せず、給与担当へ確認してください。
公式一次情報
確認日: 2026-07-27
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」: 2026年12月1日の施行、2026年分への適用、11月までの源泉徴収事務が変わらないことを確認できます。
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」: 62万円・136万円、配偶者特別控除、特定親族特別控除の2026年分の表を確認できます。
- 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」: 12月の年末調整、新たに対象となる親族の申告書、年末調整できない場合の対応を確認できます。
- 国税庁「No.1180 扶養控除」: 親族関係、生計同一、年齢区分、扶養控除額などの基本条件を確認できます。
- 国税庁「No.1191 配偶者控除」: 民法上の配偶者、本人の所得制限、配偶者控除額などの基本条件を確認できます。
- 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」: 配偶者特別控除の基本条件と、夫婦間の二重適用ができないことを確認できます。
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」: 扶養親族などの所得要件と給与所得控除の改正内容を確認できます。
- 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」: 2026年4月以降の労働契約による収入見込みと、130万円・150万円・180万円の基準を確認できます。
- 厚生労働省「年収の壁への対応」: 社会保険の年収の壁と、106万円の賃金要件の2026年10月撤廃予定を確認できます。
- 協会けんぽ「被扶養者の認定における特例について」: 一時的な収入増に関する事業主証明や、被扶養者認定の特例を確認できます。
まとめ
2026年分は、過去の「103万円」だけで判断しないことが大切です。配偶者か親族か、12月31日時点の年齢、合計所得金額、控除を受ける本人の所得制限の順に確認しましょう。
今日やることは、次の三つです。
- 家族一人につき一行の表を作り、続柄・年齢・給与収入・給与以外の所得を書き出す
- 税は国税庁の2026年専用資料へ当てはめ、改正で新たに対象になる人がいれば勤務先へ申告書を出す
- 健康保険は勤務先か加入先の健康保険、会社の家族手当は就業規則で別々に確認する
年末に収入見込みが変わったときは、そのままにしないでください。勤務先へ早めに伝え、年末調整に間に合わなければ確定申告で正しい内容へ直します。