退職後は、健康保険、雇用保険、税金などの手続きが重なります。年金を漏らさないコツは、制度をすべて覚えることではありません。退職日の翌日から、自分がどの年金制度に入るのかを先に決めることです。
この記事では、主に厚生年金に加入していた20歳以上60歳未満の人を対象に、退職後の年金手続きを整理します。空白期間がある人、再就職する人、配偶者の扶養に入る人の順に確認できます。
健康保険の任意継続や国民健康保険と、年金の切り替えは別の手続きです。「健康保険を変えたから年金も終わった」と思い込まず、受付結果を分けて確認しましょう。
最初に結論|退職日の翌日に入る制度を3択で決める
まず、退職日の翌日と次の予定を紙に書きます。次の表で、自分の行だけを確認してください。
| 退職後の行き先 | 年金上の立場 | 手続きする人 | 主な提出先 | 期限・確認点 |
|---|---|---|---|---|
| 空白期間がある、無職になる、自営業になる | 国民年金の第1号被保険者 | 本人 | 住所地の市区役所・町村役場 | 退職日の翌日から14日以内 |
| 厚生年金の対象となる会社へ再就職する | 国民年金の第2号被保険者 | 再就職先 | 再就職先が年金事務所へ届け出る | 前職との間に空白がないか確認 |
| 厚生年金に入る配偶者の扶養に入る | 国民年金の第3号被保険者 | 配偶者の勤務先を通じて手続き | 配偶者の勤務先 | 扶養の認定日と年金の届出を確認 |
厚生労働省は、第1号を自営業者、学生、無職の人など、第2号・第3号に当たらない人と説明しています。第3号は、厚生年金の加入者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者です。制度の全体像は厚生労働省「公的年金制度の体系」で確認できます。
退職後の空白期間が短くても、手続きが不要とは限りません。日本年金機構は、厚生年金の適用事業所へ再就職する場合を除き、20歳以上60歳未満の人には国民年金の加入手続きが必要と案内しています。詳しくは日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」で確認できます。
判断するときは、次の三つの日付を並べます。
- 前の会社の退職日と厚生年金の資格喪失日を確認する。
- 次の会社の入社日と厚生年金の資格取得予定日を確認する。
- 配偶者の扶養に入るなら、扶養の認定予定日を確認する。
日付の間に空白があれば、第1号の手続きを検討します。自分で判断しにくいときは、住所地の市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所へ確認してください。
行き先別の手順|提出先と必要書類を分けて確認する
空白期間がある・自営業になる人
退職後すぐに厚生年金へ入らず、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金の第1号被保険者へ切り替えます。提出期限は退職日の翌日から14日以内です。単なる目安ではありません。
紙で手続きする場合の主な窓口は、住所地の市区役所または町村役場です。日本年金機構の案内では、年金事務所の窓口や郵送も案内されています。自治体によって窓口名や必要書類が異なる場合があるため、出かける前に確認すると二度手間を減らせます。自治体の実務例として、横浜市も第3号になる場合を除き、区役所で第1号の届出を行うと案内しています(横浜市「会社を退職した場合は、国民年金に加入しなければならないのですか」)。
手続きは、次の順番で進めます。
- 基礎年金番号通知書や年金手帳など、基礎年金番号が分かるものを用意する。
- マイナンバーで届け出る場合は、マイナンバーカードなど本人確認に使う書類を用意する。
- 離職票など、退職日や厚生年金の資格喪失日を確認できる書類を用意する。
- 住所地の市区町村へ、必要書類と提出方法を確認する。
- 申請日、提出先、受付番号、書類の控えを一つのフォルダーへ保存する。
退職直後は、厚生年金の資格喪失日を証明できる書類が必要になる場合があります。必要な持ちものと期限は日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」で確認できます。
離職票が届かず、14日以内に書類をそろえられそうにないこともあります。その場合は、書類待ちのまま放置しないでください。期限前に市区町村の窓口か年金事務所へ相談し、先にできる手続きと代わりの書類を確認します。
すでに14日を過ぎていても、手続きを諦める必要はありません。気づいた日に窓口へ相談しましょう。
再就職する人
厚生年金の加入要件を満たして再就職する場合は、新しい勤務先が資格取得の手続きをします。本人が市区町村で厚生年金への切り替えを申請する流れではありません。
ただし、会社任せにしてよいのは「新しい厚生年金への届出」です。前職との空白期間は、自分でも確認します。
- 前の会社へ、厚生年金の資格喪失日を確認する。
- 新しい会社へ、厚生年金の資格取得予定日を確認する。
- 二つの日付の間に1日でも空白があれば、市区町村か年金事務所へ相談する。
- 給与明細やねんきんネットなどで、加入記録を後日確認する。
日本年金機構の例では、3月末に退職して4月16日に再就職した場合、4月1日から15日までは第1号の資格取得手続きが必要です。一方、4月末時点で第2号になっている例では、4月分の国民年金保険料は不要とされています。
つまり、空白期間の届出が必要かと、その月の国民年金保険料が発生するかは別の話です。月途中の切り替えを自己判断で省かず、資格取得日と資格喪失日を伝えて確認しましょう。
配偶者の扶養に入る人
厚生年金に加入する配偶者に扶養される20歳以上60歳未満の人は、要件を満たせば第3号被保険者になります。手続き先は本人の住所地の役所ではありません。配偶者の勤務先を通じて届け出ます。
健康保険の扶養に入る書類を出しただけで、年金も完了したと決めつけないことが大切です。配偶者の勤務先へ「国民年金の第3号の届出も処理されますか」と確認してください。
扶養の判定には、収入、同居・別居、自分の勤務先で厚生年金の対象になるかなどが関係します。一般的な収入の目安だけで認定を断定できません。必要書類と認定日は、配偶者の勤務先や加入先へ確認しましょう。
退職者に扶養されていた配偶者
本人だけでなく、配偶者の切り替えも見落としやすい点です。厚生年金の加入者が退職すると、その人に扶養されていた配偶者は第3号の資格を失います。
配偶者が20歳以上60歳未満で、自分の勤務先の厚生年金に入らず、別の厚生年金加入者の扶養にも入らない場合は、第1号への切り替えを確認します。世帯の手続きは、次のように二行に分けると漏れにくくなります。
- 退職した本人の次の制度、提出先、受付結果を確認した
- 扶養されていた配偶者の次の制度、提出先、受付結果を確認した
窓口へ行く時間を減らす|マイナポータルで電子申請する
マイナンバーカードがあれば、第1号への加入や保険料の免除・納付猶予をマイナポータルから電子申請できます。窓口の開いている時間に合わせにくい人に便利です。
デジタル庁の案内では、スマートフォンから24時間365日申請でき、送信後に処理状況と申請結果も確認できます。利用には、マイナンバーカードと、受取時に設定した2種類の数字4桁のパスワードが必要です。対象手続きと必要なものはデジタル庁「マイナポータルから国民年金手続の電子申請ができます」で確認できます。
電子申請は、送信ボタンを押したら終わりではありません。次の順番で記録を残します。
- 申請前に、退職日と資格喪失日が分かる書類を手元へ集める。
- マイナポータルの現行画面で対象手続きを選ぶ。
- 送信後の受付情報を保存する。
- 処理状況を確認する日を予定表へ入れる。
- 申請結果が届いたら、内容と対象期間を確認する。
画面名や操作の流れは変わることがあります。固定したボタン名だけを頼りにせず、申請時点のマイナポータル公式画面で確認してください。
紙と電子のどちらを選んでも、家計用フォルダーへ「申請日・提出先・受付番号・結果確認日」を残すと、問い合わせが必要になったときに困りません。
保険料が難しい人|未納にせず免除・納付猶予を申請する
退職で収入が下がり、国民年金保険料をすぐ払えないことがあります。そのときは、納付書を放置する前に、保険料免除か納付猶予を申請します。
免除・納付猶予は、申請すれば承認されるとは限りません。本人、配偶者、世帯主などの所得を基に審査されます。対象者と審査範囲が違うため、次の表で整理しましょう。
| 状態 | 今の支払い | 受給資格期間への算入 | 老齢基礎年金額への反映 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 全額免除 | 承認期間は全額免除 | 算入される | 一部が反映される | 本人・世帯主・配偶者などの所得審査がある |
| 一部免除 | 減額後の保険料を納める | 条件を満たせば算入される | 全額納付より少なく反映される | 減額後の保険料を納めないと未納扱いになる |
| 納付猶予 | 承認期間は納付を猶予 | 算入される | 追納しない限り反映されない | 対象は20歳以上50歳未満で、本人・配偶者の所得審査がある |
| 未納 | 払っていない | 算入されない | 反映されない | 障害基礎年金や遺族基礎年金の要件にも影響し得る |
免除は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類です。納付猶予は20歳以上50歳未満の人が対象です。いずれも未納とは扱いが異なります。
失業等の事実を確認できる場合は、失業した本人の前年所得にかかわらず審査を受けられる特例があります。ただし、世帯主や配偶者など、ほかの審査対象者の所得要件までなくなるわけではありません。
申請時に用意する書類
申請するときは、雇用保険被保険者離職票、雇用保険受給資格者証、雇用保険受給資格通知など、失業の事実が分かる書類のコピーを用意します。制度の違い、必要書類、申請できる期間は日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」で確認してください。
免除や納付猶予の承認期間は、一定の要件を満たせば障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されます。未納のままにするより、家計と将来の両方を守りやすくなります。
承認後に確認すること
承認された保険料は、10年以内なら追納できる場合があります。追納とは、後から保険料を納めて将来の年金額を増やす手続きです。再就職後に家計が落ち着いたら、追納するかを検討しましょう。
保険料額、所得基準、一部免除後の納付額は年度によって変わることがあります。申請する年度の公式案内で最新情報を確認してください。
よくある質問
退職から再就職まで数日だけ空く場合も手続きは必要ですか?
空白期間があれば、短くても第1号の資格取得手続きを確認します。日本年金機構の3月末退職・4月16日入社の例では、4月1日から15日までが第1号です。ただし、4月末時点で第2号なら、例では4月分の国民年金保険料は不要とされています。届出の要否と、その月の保険料の有無を分けて確認してください。
離職票が14日以内に届かないときはどうしますか?
第1号の提出期限は、退職日の翌日から14日以内です。離職票など、資格喪失日を証明する書類が必要になる場合があります。書類待ちのまま期限を過ぎそうなら、住所地の市区町村か年金事務所へ先に連絡し、代わりに使える書類と提出方法を確認してください。
配偶者の健康保険の扶養に入れば、第3号も自動で終わりますか?
第3号の資格取得届が必要です。届出は配偶者の勤務先を通じて行います。健康保険と一緒に処理される場合でも、年金の第3号届も提出されるかを勤務先へ確認しましょう。
退職者に扶養されていた配偶者にも手続きが必要ですか?
必要になる場合があります。厚生年金の加入者が退職すると、その人に扶養されていた配偶者も第3号の資格を失います。自分の勤務先の厚生年金や、別の厚生年金加入者の扶養に入らない場合は、第1号への切り替えを確認してください。
退職して保険料を払えないとき、納付書を放置してもよいですか?
放置せず、免除・納付猶予を申請してください。承認された免除・納付猶予と未納では、受給資格期間や将来の年金額の扱いが違います。失業等の特例もあるため、離職票などを用意して早めに相談しましょう。
公式一次情報
確認日: 2026-07-27
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」: 空白期間、再就職、第3号、退職者に扶養されていた配偶者の手続きを確認できます。
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」: 第1号の提出期限、提出先、必要書類を確認できます。
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」: 免除・納付猶予・未納の違い、失業等の特例、必要書類を確認できます。
- 厚生労働省「公的年金制度の体系」: 第1号・第2号・第3号被保険者の対象と制度の全体像を確認できます。
- デジタル庁「マイナポータルから国民年金手続の電子申請ができます」: 電子申請の対象、必要なもの、処理状況と結果の確認方法を確認できます。
- 横浜市「会社を退職した場合は、国民年金に加入しなければならないのですか」: 自治体窓口と配偶者の勤務先で手続き先が異なる実務例を確認できます。
まとめ
制度内容は2026-07-27 時点で確認しています。制度や画面は変更されることがあるため、最新は各社の公式サイトでご確認ください。
- 退職日の翌日、再就職先の資格取得日、配偶者の扶養認定日を書き出し、自分の行き先を決める。
- 第1号なら退職日の翌日から14日以内に届け出て、支払いが難しければ未納にせず免除・納付猶予も申請する。
- 申請日、提出先、受付番号、書類の控え、処理結果を一つのフォルダーへ保存する。