収入が減ったり、仕事を辞めたりして国民年金保険料を払うのが難しいときは、未納のままにしないでください。保険料免除または納付猶予を申請できる可能性があります。
承認された期間は、老齢基礎年金を受け取るために必要な期間へ算入されます。一定の要件を満たせば、障害基礎年金や遺族基礎年金の判定でも対象期間として扱われます。何も手続きをしていない未納とは扱いが違います。
この記事では、2026年7月27日時点の公式案内をもとに、次の順番で手続きを進めます。
- 免除と納付猶予のどちらを検討するか決める
- 所得基準と失業特例を確認する
- 必要な物をそろえる
- スマホ、窓口、郵送のいずれかで申請する
- 結果通知を確認する
未納のままにせず、まず免除・納付猶予を申請する
保険料を払っていない状態でも、申請が承認された期間と、手続きをしていない未納期間では扱いが異なります。
| 状態 | 老齢基礎年金の受給資格期間 | 老齢基礎年金額への反映 | 申請後に必要な支払い |
|---|---|---|---|
| 全額免除 | 算入される | 全額納付した場合の2分の1が反映される | なし |
| 一部免除 | 残りの保険料を納めれば算入される | 免除区分に応じて一部が反映される | 減額後の保険料を納める |
| 納付猶予 | 算入される | 追納しない限り反映されない | 承認期間中の支払いは猶予される |
| 未納 | 算入されない | 反映されない | 未納のまま残る |
この違いは、日本年金機構の制度案内と厚生労働省の公的年金制度の解説で確認できます。
特に注意したいのが一部免除です。免除には、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があります。承認後に減額された保険料を納めて、初めて一部免除が有効になります。残りを納めなければ、その期間は未納扱いです。
また、免除や納付猶予の期間があれば、それだけで障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れるわけではありません。ほかの納付要件なども満たす必要があります。それでも、未納のままにするより、支払いが難しいと分かった時点で申請することが大切です。
免除と納付猶予のどちらを検討するか
迷ったときは、年齢、学生かどうか、誰の所得が審査されるかの順に確認します。
免除と納付猶予の違い
- 免除:本人、配偶者、世帯主の所得が審査対象です。全額免除と3段階の一部免除があります。
- 納付猶予:20歳以上50歳未満で、学生ではない人が対象です。本人と配偶者の所得が審査されます。世帯主の所得は審査対象ではありません。
親と同居していて、親が世帯主になっている人は、この違いが重要です。世帯主の所得により免除に該当しない場合でも、本人と配偶者が基準を満たせば、納付猶予に該当する可能性があります。
申請書では、原則として全額免除、納付猶予、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の順に審査されます。希望しない区分がある場合だけ、その区分を審査対象から外します。払える額を判断できないときは、自分で審査の範囲を狭める前に年金事務所へ相談しましょう。
所得基準の計算式
2026年7月27日時点の公式案内では、所得基準は次の式です。ここでいう「所得」は、給与の総支給額や手取り額と同じではありません。扶養親族等の数や各種控除も関係します。
| 審査される区分 | 所得基準の計算式 |
|---|---|
| 全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
| 納付猶予 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
| 4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
| 半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
| 4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
たとえば、扶養親族等が0人なら、全額免除と納付猶予の式は「(0+1)×35万円+32万円」で67万円です。ただし、実際の判定では審査対象者ごとの所得や控除、世帯の状況を確認します。1月から6月に申請する場合は、原則として前々年所得が審査対象です。自分で不該当と決めず、最新の基準を公式案内で確認してください。
失業した人は前年所得だけで諦めない
失業、倒産、事業の廃止などの事実を確認できる場合は、失業等をした人の前年所得にかかわらず審査を受けられる特例があります。
前年は働いていて所得が高かった人も、現在の家計で払えないなら申請を検討できます。ただし、失業した本人以外の審査対象者まで、所得要件がなくなるわけではありません。免除では配偶者と世帯主、納付猶予では配偶者の所得も確認されます。
特例を使う場合は、事情に応じて次のような書類を用意します。
- 雇用保険被保険者離職票のコピー
- 雇用保険受給資格者証のコピー
- 雇用保険受給資格通知のコピー
- 廃業や事業休止の事実を確認できる公的書類
用意できる書類は人によって違います。書類が分からない場合は、年金事務所へ退職や廃業の状況を伝えて確認してください。
学生や子育て中の人は別制度を先に確認する
次に当てはまる人は、一般の免除・納付猶予とは別の制度や特例を先に確認します。
- 学生:学生納付特例
- 生活保護の生活扶助を受けている人、障害年金を受けている人:法定免除
- 出産前後の人:産前産後期間の免除
- 震災や風水害などで被災した人:所得に関係なく承認される場合がある制度
- DV(配偶者などからの暴力)により避難している人:個別事情に応じた特例
さらに、2026年10月1日から国民年金保険料の育児免除制度が始まる予定です。1歳になるまでの子を養育する国民年金第1号被保険者の実父母・養父母が対象で、所得要件はありません。2026年7月27日時点では施行前なので、対象期間や手続きは日本年金機構の育児免除制度の案内で最新情報を確認してください。
申請に必要な物をそろえ、提出方法を選ぶ
申請する制度の見当がついたら、必要な物を一度にそろえます。
申請前チェックリスト
- 申請したい月をメモした
- 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる物を用意した
- 失業、倒産、廃業の特例を使う場合は確認書類を用意した
- 配偶者と世帯主の氏名や状況を確認した
- 申請期間が複数年度にまたがるか確認した
- 審査対象者に税の申告をしていない人がいないか確認した
- 一部免除になった場合は残りの保険料を納めると理解した
所得証明書は原則として添付不要です。ただし、本人、配偶者、世帯主のうち、確定申告や年末調整などの税の申告をしていない人がいる場合は、市区町村の税務担当窓口で市区町村民税の申告をしてから申請します。
スマホやパソコンで電子申請する手順
マイナンバーカードがあり、外出せずに進めたい人は、マイナポータルの電子申請が便利です。デジタル庁も、マイナポータルから国民年金保険料の免除・猶予手続きができると案内しています。
- マイナポータルへログインする
- ホーム画面の「年金」を選ぶ
- 国民年金保険料の免除・納付猶予の手続きを選ぶ
- 氏名、住所、配偶者、世帯主、申請年度などを入力する
- 失業特例などを使う場合は、確認書類の画像を添付する
- 入力内容を見直して申請する
操作の入口は、マイナポータルの年金申請に関する案内でも確認できます。
免除・納付猶予の年度は、7月から翌年6月までです。1回の電子申請で申請できるのは1年度分です。複数年度にまたがる場合は、年度ごとに申請してください。
窓口または郵送で申請する手順
紙で申請する場合は、「国民年金保険料 免除・納付猶予申請書」を使います。日本年金機構の公式ページでは、申請書とセルフチェックシートを公開しています。
- 申請書を用意する
- 基礎年金番号またはマイナンバーを記入する
- 申請年度、配偶者、世帯主、失業特例などの欄を記入する
- 必要な添付書類をそろえる
- セルフチェックシートで記入漏れと添付漏れを確認する
- 住所地の市区町村役場の国民年金担当窓口、または年金事務所へ提出する
窓口へ行けない場合は郵送もできます。基礎年金番号で手続きする場合は、基礎年金番号通知書や年金手帳など、番号を確認できる物を用意します。
マイナンバーを記入した申請書を郵送する場合は、番号確認と本人確認に必要な書類の写しも添えます。封をする前に、提出先と添付書類をセルフチェックシートで見直しましょう。
過去分も申請できるが、先送りしない
免除・納付猶予は、保険料の納付期限から2年を過ぎていない期間について、申請時点から2年1カ月前までさかのぼって申請できます。月が進むたびに、申請できる古い月が減っていきます。
また、事故や病気が起きた後で過去分を申請しても、その申請期間は障害基礎年金の保険料納付要件へ算入されません。遺族基礎年金にも一定の納付要件があります。「後から申請できる」と考えて待たず、支払いが難しいと分かった時点で手続きしてください。
申請後は進捗・結果通知・翌年度を確認する
申請書を出しただけでは、免除や納付猶予は確定しません。申請後も次の順番で確認します。
- 電子申請の進捗を見る
マイナポータルの画面下にある「やること」タブで、年金手続きの進捗を確認できます。詳しい審査状況を知りたい場合は、日本年金機構へ問い合わせます。確認場所はマイナポータルの進捗確認案内に掲載されています。 - 結果通知の承認期間を見る
申請した月がすべて承認されているかを確認します。 - 承認区分を見る
全額免除、一部免除、納付猶予のどれになったかを確認します。 - 一部免除なら残りを納める
通知書と納付書に書かれた金額と期限を確認します。減額後の保険料を納めないと、その期間は未納扱いになります。 - 翌年度の手続きを確認する
申請は原則として年度ごとに必要です。全額免除または納付猶予で継続審査を希望できる場合もあります。一部免除になった場合や、失業等の特例で承認された場合は、翌年度に改めて申請が必要です。
婚姻、離婚、配偶者の死亡などで配偶者の状況が変わった場合は、変更の届け出が必要になることがあります。継続審査中でも、そのままにせず年金事務所へ確認してください。
家計に余裕が戻ったら、免除や納付猶予の期間を後から納める「追納」も検討できます。追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間です。免除等を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が上乗せされます。
ただし、今の生活費を削ってまで急ぐかは別の判断です。家賃、食費、光熱費、医療費などを先に確保してください。そのうえで、追納できる月と金額を年金事務所へ確認しましょう。
よくある質問
親と同居していると免除を受けられませんか?
免除では、本人、配偶者、世帯主の所得が審査されます。そのため、世帯主である親の所得が影響する場合があります。
一方、20歳以上50歳未満で学生ではない人が利用できる納付猶予は、本人と配偶者の所得が審査対象です。世帯主の所得は対象外です。最初から対象外と決めず、免除と納付猶予の両方を確認してください。
昨年は収入がありましたが、失業した今は申請できますか?
失業、倒産、廃業の事実を確認できれば、該当する本人の前年所得にかかわらず審査される特例があります。離職票や雇用保険受給資格者証など、事情に合う確認書類を添えて申請します。
ただし、配偶者や世帯主の所得要件まで自動的になくなるわけではありません。申請先で審査対象者を確認してください。
過去の未納分はいつまでさかのぼって申請できますか?
保険料の納付期限から2年を過ぎていない期間について、申請時点から2年1カ月前まで申請できます。ただし、申請できる月は時間とともに減ります。
事故や病気が起きた後のさかのぼり申請では、障害基礎年金の保険料納付要件へ算入されません。支払いが難しいと分かった時点で早めに申請してください。
一部免除が承認されたら、残りも払わなくてよいですか?
いいえ。減額後の保険料を納める必要があります。納めないと一部免除が無効となり、その期間は未納扱いです。結果通知と納付書で金額と期限を確認してください。
マイナポータルで申請した後、どこで進捗を確認できますか?
画面下の「やること」タブで確認できます。詳しい審査状況を知りたい場合は、日本年金機構へ問い合わせてください。
公式一次情報
確認日: 2026-07-27
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」: 制度の対象者、所得基準、失業特例、申請方法、未納との違いを確認できます。
- 日本年金機構「免除・納付猶予申請書とセルフチェックシート」: 紙の申請書、提出前の確認事項、本人確認書類を確認できます。
- 日本年金機構「免除・納付猶予申請書の電子申請」: 電子申請の入力項目、申請年度、添付画像、審査順を確認できます。
- 日本年金機構「免除等を申請できる期間」: 過去分を申請できる期間と、早めに申請すべき理由を確認できます。
- 日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」: 追納できる期間、申込方法、加算額が付く時期を確認できます。
- 日本年金機構「2026年10月からの育児免除制度」: 対象となる親子、免除期間、所得要件がないことを確認できます。
- 厚生労働省「公的年金制度の体系」: 免除、一部免除、納付猶予が年金記録へどう反映されるかを確認できます。
- デジタル庁「マイナンバーカードの利用シーン」: マイナポータルから国民年金の免除・猶予手続きができることを確認できます。
- マイナポータル「年金に関する申請方法」: ホーム画面の「年金」から申請を始める方法を確認できます。
- マイナポータル「電子申請の進捗確認」: 「やること」タブで進捗を確認する方法を確認できます。
まとめ
国民年金保険料の支払いが難しいときは、未納のまま放置せず、免除または納付猶予を申請できないか確認しましょう。今日することは次の3つです。
- 自分が免除、納付猶予、学生納付特例、産前産後免除などのどれに当たりそうか確認する
- 基礎年金番号またはマイナンバーと、失業などの事情を確認できる書類をそろえる
- マイナポータル、窓口、郵送から申請方法を選び、申請後は結果通知まで確認する
一部免除になった場合は、減額後の保険料を期限までに納めます。家計が戻った後は、今の生活費を優先しながら追納を検討できます。判断に迷う場合は、自分だけで不該当と決めず、市区町村の国民年金担当窓口または年金事務所へ相談してください。