病気やけがで休職するとき、最初に確認したいお金の一つが健康保険の傷病手当金です。協会けんぽでは、被保険者が病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な給与を受けられないとき、条件を満たせば支給されます。
ただし、「3日休めば3日分が出る」「給与の3分の2がそのまま振り込まれる」と覚えると間違いやすい制度です。最初の連続3日間は待期で支給対象にならず、金額は原則として標準報酬月額を基に日額を計算します。申請には本人だけでなく、勤務先と医師等の記入も必要です。
この記事では、協会けんぽの被保険者本人を中心に、休職を決めた直後から申請までを順番に整理します。健康保険組合や共済組合へ加入している人は、書式や運用が異なることがあるため、加入先の案内も確認してください。制度情報は2026年8月5日に公式サイトで確認しました。
傷病手当金を受ける4つの条件
協会けんぽが案内する給付対象は、次の4条件をすべて満たす場合です(出典:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/)。
- 業務外の事由による病気やけがの療養で休んでいる
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかった
- 休業した期間について給与の支払いがない
一つ目の「業務外」が重要です。仕事中や通勤中の災害で労災保険の対象となるものは、傷病手当金の対象外です。一方、健康保険を使った通院だけに限られず、自費診療や自宅療養でも、仕事に就けないことについて証明があれば対象になり得ます。
二つ目の「仕事に就けないか」は、病名だけで自動的に決まりません。協会けんぽは、療養担当者の意見などを基に、本人の仕事内容も考慮して判断すると案内しています。たとえば同じ症状でも、身体を使う仕事と在宅の事務仕事では、仕事への影響が同じとは限りません。受診時には病名だけでなく、勤務時間、通勤方法、具体的な作業、症状で難しい動作を医師へ伝えておきましょう。
四つ目は「無給」が基本ですが、休業中に給与が一部支払われても直ちに対象外とは限りません。支払われた給与が傷病手当金の額より少なければ、その差額が支給されます。会社独自の休職手当や有給休暇を使う場合は、どの日にいくら支払われるかを人事・労務担当へ確認してください。
待期3日は「連続」が条件
待期とは、傷病手当金の支給が始まる前に必要な連続3日間です。この3日分には傷病手当金が支給されず、条件を満たした後の4日目以降が支給対象になります。
たとえば月曜日から木曜日まで、療養のため連続して仕事に就けなかった場合、月・火・水が待期で、木曜日から支給対象です。月曜と火曜を休み、水曜に出勤し、木曜から再び休んだ場合は、最初の休みが2日で途切れるため、その時点では待期が完成しません。
待期3日には、有給休暇、土日、祝日などの公休日も含められます。給与が出たかどうかではなく、療養のため仕事に就けない状態の日が3日連続したかで考えます。たとえば金曜日に休み、もともと休みの土曜日と日曜日も療養していたなら、3日間の連続性を満たし、月曜日が4日目となり得ます。自己判断で日付を決めず、申請書に記載する療養期間と勤務先の出勤記録が合うよう確認してください。
なお、仕事中に業務外の事由による病気やけがで働けない状態になった場合は、その日を待期の初日として数えられると協会けんぽは案内しています。早退日がある場合も、勤務先と加入先へ扱いを確認しましょう。
1日あたりの金額を計算する
支給開始日以前に被保険者期間が継続して12か月以上ある場合、1日あたりの支給額は次の考え方で計算します。
支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
ここで使うのは、銀行口座へ入る手取り額でも、基本給だけでもありません。健康保険料の計算に使われる「標準報酬月額」です。まず、給与明細や勤務先への問い合わせで自分の標準報酬月額を確認してください。
協会けんぽの2026年の公式例では、支給開始日が2026年2月15日、直前12か月の標準報酬月額が前半6か月16万円、後半6か月18万円の場合、平均は17万円です。17万円を30で割った額は5,670円(10円未満四捨五入)、その3分の2に当たる1日3,780円(1円未満四捨五入)が例示されています(出典:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/)。
仮に待期完成後の支給対象日が30日なら、「3,780円×30日=11万3,400円」が単純な見込額です。ただし、これは公式例の日額を使った試算であり、実際は本人の標準報酬月額、支給対象日数、給与の支払い、他の給付との調整などで変わります。
加入期間が12か月未満の場合
支給開始日以前の加入期間が12か月に満たない場合は、次のうち低い額を計算の基礎にします。
- 支給開始月以前の、直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
- 支給開始日の属する年度の前年度9月30日時点での、協会けんぽ全被保険者の標準報酬月額の平均
協会けんぽは、後者を支給開始日が2025年4月1日以降の人について32万円と案内しています。2026年に支給開始する人もこの区分ですが、自分で上限額のように当てはめず、加入履歴を含めて協会けんぽへ確認してください。
支給期間は通算して1年6か月
同じ病気やけがについての支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。途中で復職して支給されない期間があれば、その期間は1年6か月に算入されず、残りを繰り越せます。厚生労働省も、2022年1月1日から支給期間が通算化されたことを案内しています(出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html)。
これは「休職開始日から必ず1年6か月後に終わる」という意味ではありません。また、別の病気なら必ず新たに1年6か月受けられる、と本人だけで判定するものでもありません。同一の傷病や関連する傷病に当たるかは加入先が審査します。復職と再休職を繰り返す可能性があるときは、支給決定通知書と申請期間の控えを時系列で保管しましょう。
申請の流れは6手順
傷病手当金は、会社へ休職届を出すだけでは申請になりません。次の順で、本人・勤務先・医師等の記載をそろえます。
- 加入先を確認する:資格情報のお知らせ、マイナポータル、勤務先への確認で、協会けんぽの支部または健康保険組合名を特定します。
- 勤務先へ休職中の給与を確認する:有給休暇、欠勤控除、会社独自の手当、賞与や通勤手当の扱いを確認し、休んだ日を記録します。
- 申請期間を決める:待期3日の成立日と、その後に仕事へ就けなかった期間を勤務先と照合します。期間の区切り方は勤務先と加入先へ確認します。
- 本人記入欄を書く:被保険者情報、振込先、傷病名、申請期間などを記入します。記号・番号を記入した場合、協会けんぽの申請書ではマイナンバーの記入は不要です。
- 勤務先と医師等へ記入を依頼する:勤務先には出勤状況と給与支払い、療養担当者には労務不能と認めた期間などの意見を記入してもらいます。診察時に仕事内容も伝え、申請期間の認識を合わせます。
- 加入先へ提出し、控えを残す:協会けんぽでは電子申請、または加入支部への郵送が案内されています。提出前に全ページを保存し、受付日と申請対象期間を記録します。
申請書と記入例、提出方法は協会けんぽの公式ページから確認できます(出典:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/application_form/benefit/001/)。協会けんぽは、審査の結果支払い可能な場合、受付日から10営業日以内に支払うと案内しています。ただし、勤務先や医師等に記入を依頼する時間はその前に必要です。休職直後の生活費を「申請すればすぐ入る」前提で組まないようにしてください。
申請前チェックリスト
- 自分が加入する健康保険と提出先を確認した
- 病気やけがが業務・通勤に関係するか勤務先へ伝えた
- 待期3日が連続していることをカレンダーで確認した
- 休職中の給与、有給休暇、会社手当の支払日と金額を確認した
- 自分の標準報酬月額と、おおよその支給日額を確認した
- 申請期間を本人・勤務先・医師等でそろえた
- 必要な全ページの記入と署名漏れがないか確認した
- 提出書類の控え、提出日、申請期間を保存した
特に先に動きたいのは、勤務先と医師等への記入依頼です。療養が長引く場合は、毎回の申請期間が重複したり空いたりしないよう、一覧表に「申請開始日、申請終了日、会社へ依頼した日、医療機関へ依頼した日、提出日、振込日」を残すと確認しやすくなります。
よくある質問
有給休暇を使った日は待期に数えられますか?
療養のため仕事に就けない状態であれば、有給休暇の日も待期3日に含められます。ただし、待期完成後に有給休暇で給与が全額支払われる日は、傷病手当金が支給されないのが基本です。給与が傷病手当金より少ない場合は差額支給の可能性があります。
土日を挟めば待期が完成しますか?
土日などの公休日も待期に含められますが、単に休日が挟まればよいのではありません。病気やけがの療養のため仕事に就けない状態が連続していることが前提です。申請書に記載する期間を医師等と確認してください。
申請はいつまでできますか?
協会けんぽによると、傷病手当金を受ける権利は、受けられるようになった日の翌日から2年で時効になります。時効は労務不能だった日ごとに、その翌日から進みます(出典:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/application_form/benefit/001/)。後回しにせず、勤務先と医師等の証明がそろう時期を確認して申請しましょう。
退職後も受け取れますか?
協会けんぽでは、資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に現に受給中か、受けられる状態などの条件を満たせば、資格喪失後も継続給付を受けられる場合があります。ただし、退職後に一度仕事へ就ける状態になった場合、その後さらに仕事へ就けない状態になっても支給されないと案内されています。退職を決める前に、加入先へ個別に確認してください。
今日やることは3つです
まず、勤務先へ「加入している健康保険」「休職中の給与」「申請書の会社記入窓口」を確認します。次に、休み始めた日からの勤務・有給・公休日をカレンダーへ記録し、待期3日を確認します。最後に、受診時に仕事内容と働けない理由を医師へ伝え、申請書の記入を依頼できる時期を尋ねます。
傷病手当金は、治療中の生活を支える制度ですが、支給日までには申請準備と審査があります。見込額だけで家計を組まず、手元資金と固定費の支払日も一緒に確認してください。条件に迷ったら、勤務先だけで判断せず、自分が加入する健康保険の窓口へ問い合わせるのが確実です。
参考にした公式情報
- 全国健康保険協会「傷病手当金」
- 全国健康保険協会「健康保険傷病手当金支給申請書」
- 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
- e-Gov法令検索「健康保険法(第99条)」
2026-08-05 時点の公式情報調べ。最新は加入している健康保険の公式サイトでご確認ください。
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