日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を返している途中で、失業、収入減、病気などが重なると、毎月の返還が家計を圧迫します。「今月だけ足りない」と思っていても、足りない分を借入れで埋め続けると、家計の立て直しが難しくなります。
返還が苦しいときに確認したいのが、減額返還制度と返還期限猶予制度です。文部科学省も、この2つを返還が難しいときのセーフティネットとして案内しています。
この記事では、どちらを検討するか、何を準備するか、すでに延滞しているときはどう動くかを順番に説明します。制度内容と数字は2026-07-27時点のものです。審査は事情と提出書類を基に行われます。収入が目安内でも、承認されると決まっているわけではありません。申請時点の公式案内も確認してください。
先に結論|返せる月額と延滞の有無で入口を決める
当初の返還額は難しくても、一部なら毎月返せる人は、減額返還を検討します。減額後の月額でも生活が成り立たない人は、返還期限猶予を検討します。
ただし、減額返還は願出時と審査時に延滞していないことが主な条件です。すでに延滞している人は、減額返還ではなく、延滞中の返還期限猶予の手続きを先に確認します。
最初に、次の4点を1枚の紙やスマートフォンのメモへ書き出してください。
- 奨学生番号
- 次回の振替日と毎月の返還額
- 延滞の有無と、延滞している場合は開始月
- 家賃や食費、医療費などを払った後に返せる月額
ここまで分かれば、相談するときに状況を短く伝えられます。複数の奨学生番号がある人は、番号ごとに返還額と延滞の有無を分けて整理しましょう。
減額返還と返還期限猶予の違い
2つの制度は、返還予定総額を値引きする制度ではありません。減額返還は毎月の返還額を小さくし、返還期間を延ばします。返還期限猶予は、承認された期間の返還期限を後ろへ移します。
| 比べる項目 | 減額返還 | 返還期限猶予(経済困難による一般猶予) |
|---|---|---|
| 向いている状況 | 一部なら毎月返せる | 一定期間、返還自体が難しい |
| 収入・所得の目安 | 給与収入400万円以下、給与以外の所得を含む場合は所得300万円以下 | 給与収入300万円以下、給与以外の所得を含む場合は所得200万円以下 |
| 1回の願出期間 | 12か月まで | 1年ごと |
| 通算の上限 | 15年(180か月) | 経済困難は原則10年。ただし事由別の例外あり |
| 延滞中の利用 | 願出時と審査時に延滞がないことが主な条件 | 延滞中の人向けの申請手順あり |
減額返還では、当初の返還月額を3分の2、2分の1、3分の1、4分の1のいずれかに減らします。たとえば月1万2,000円を2分の1にした場合、月額の目安は6,000円です。その分、返還期間は延びます。実際の月額と期間は、審査結果で確認してください。
表の金額は、2026-07-27時点でJASSOが示す目安です。減収、休職、失業、扶養する子どもの人数、定められた特別な支出などにより、確認する条件や書類が変わる場合があります。金額だけで対象外と決めず、申請事由に合うページを確認します。
返還期限猶予は、JASSOが任意に作った案内だけではありません。独立行政法人日本学生支援機構法第15条第2項には、災害や傷病などで返還が難しくなったとき、機構が返還期限を猶予できることが定められています。ただし、法律の条文だけでは個別の必要書類は分かりません。具体的な条件はJASSOの事由別ページで確かめます。
申請前に条件・事由・必要書類を確認する
減額返還の主な条件
JASSOの減額返還制度の概要では、主な条件として次の点が案内されています。
- 災害、傷病、経済的な理由などで返還が難しい
- 願出時と審査時に延滞していない
- 口座振替(登録口座からの自動引き落とし)に加入している
- 月賦返還(毎月返す方法)で返還している
平成29年度以降に第一種奨学生として採用され、所得連動返還方式を選んでいる人は、減額返還を申請できません。自分の返還方式が分からない場合は、通知やスカラネット・パーソナルで確認します。
返還期限猶予の事由
一般猶予には、経済困難のほか、傷病、災害、生活保護受給中、産前・産後休業や育児休業などの事由があります。事由によって条件、証明書、適用期間の扱いが違います。経済困難の「原則通算10年」を、すべての事由へ当てはめないようにしてください。
卒業・退学した時期で選ぶページが変わる
2026-07-27時点のJASSOの案内では、2025年11月以前に卒業・退学などをした人は「経済困難」を確認します。2025年12月以後に卒業・退学などをした人は「新卒等」の申請事由を確認します。この分岐は減額返還と一般猶予の両方にあります。
用意する情報と書類
まず、次の情報をそろえます。
- 奨学生番号と本人情報
- 希望する制度と適用を希望する期間
- 返還が難しくなった理由と時期
- 収入、所得、失業、傷病などを示す証明書
- 口座振替の登録状況
- 複数番号がある場合は、番号ごとの返還状況
必要な証明書は、申請事由と申請時期で変わります。経済困難では、申請時点の案内にある所得証明書や課税証明書などを確認します。マイナンバーの提出により、一部の証明書を省略できる場合もあります。ただし、すべての書類が不要になるわけではありません。
古い用紙や前年の必要書類一覧をそのまま使わないでください。所得を確認する年度、原本が必要か、発行日の条件があるかを、提出前に事由別ページで見直します。
申請手順|オンラインまたは書面で願い出る
次の順番で進めると、制度の選び間違いや書類漏れを減らせます。
-
返還状況を確認する
スカラネット・パーソナルやJASSOから届いた通知で、奨学生番号、次回振替日、月額、残額、延滞の有無を確認します。 -
家計から返せる月額を出す
直近3か月ほどの手取り収入と、家賃、光熱費、通信費、食費、医療費などを一覧にします。生活を維持した後に、無理なく出せる額を計算します。 -
制度と申請事由を選ぶ
一部なら毎月返せる場合は減額返還を検討します。一定期間の返還が難しい場合は、返還期限猶予を検討します。卒業・退学時期による「経済困難」と「新卒等」の分岐も確認します。 -
事由に合う証明書をそろえる
失業、傷病、経済困難など、自分の事由に対応する最新の一覧を使います。証明書をすぐ用意できないときも、必要な書類と提出期限を先に確認します。 -
スカラネット・パーソナルから願い出る
条件に当てはまる場合は、オンラインで申請できます。送信後は、申請日、受付内容、提出した資料名を控えます。 -
オンラインで申請できない場合は郵送する
JASSOの手続き案内に沿って、最新の願出用紙、事由に合う証明書、チェックシートをそろえます。記入漏れや対象期間を見直し、公式ページに記載された受付窓口へ送ります。提出書類の写しと発送記録も保管します。 -
結果と適用開始月を確認する
願い出ただけでは承認ではありません。承認された制度、適用期間、適用開始月、次回振替額を結果で確認します。申請しただけで口座振替が止まるとは考えず、結果が分かるまで口座の残高にも注意します。
すでに延滞している場合は、証明できる期間や入金できる範囲によって入口が分かれます。JASSOは、延滞開始月から1年ごとに一般猶予を申請する方法、証明できない期間を入金した後に一般猶予を申請する方法、延滞を据え置く猶予を申請する方法を案内しています。どの方法でも利用できるわけではないため、専用ページを確認し、早めにJASSOへ相談してください。
減額返還が承認された後も、口座残高を確認します。減額返還中に2回続けて振替不能になると、延滞が発生した時点へさかのぼって適用が取り消されます。その場合は、当初の返還月額を基にした延滞額と延滞金の返還が必要になります。
よくある質問
減額返還と返還期限猶予は、どちらを選べばよいですか?
減額後なら生活を維持しながら毎月返せる場合は、減額返還を検討します。一定期間の返還自体が難しい場合は、返還期限猶予を検討します。まず家計から返せる月額を出し、制度の条件と比べてください。
すでに延滞していても申請できますか?
減額返還は、願出時と審査時に延滞がないことが主な条件です。返還期限猶予には、延滞中の人向けの手続きがあります。延滞開始月、証明書を用意できる期間、入金できる範囲によって進み方が変わるため、専用ページから確認します。
収入の目安を少し超えていたら申請できませんか?
金額だけで対象外と決めないでください。減収、休職、失業、扶養する子どもの人数、定められた特別な支出などで、追加の条件や書類が案内されている場合があります。自分の事情に合う事由別ページを確認します。
マイナンバーを提出すれば、所得証明書は不要ですか?
経済困難の申請では、マイナンバーの提出により所得証明書などを省略できる場合があります。事由や申請方法によって必要書類は異なります。提出前に最新の一覧を確認してください。
申請したら、すぐに口座振替は止まりますか?
願い出と承認は別です。申請しただけで振替が止まったとは判断できません。審査結果で、適用開始月、次回振替額、適用期間を確認します。
公式一次情報
確認日: 2026-07-27
- JASSO「減額返還制度の概要」: 減額割合、適用条件、1回と通算の期間、振替不能時の扱いが書かれています。
- JASSO「経済困難(減額返還制度の申請事由)」: 収入・所得の目安、証明書、卒業・退学時期による申請事由の分岐が書かれています。
- JASSO「経済困難(一般猶予の申請事由)」: 一般猶予の収入・所得基準、願出期間、必要書類が書かれています。
- JASSO「延滞している場合の返還期限猶予の申請手続き」: 延滞期間と証明できる事情に応じた申請の入口が書かれています。
- 文部科学省「奨学金事業の充実」: 減額返還と返還期限猶予を、返還困難時のセーフティネットとして説明しています。
- e-Gov法令検索「独立行政法人日本学生支援機構法」: 第15条第2項に、返還期限猶予の法的な根拠が書かれています。
まとめ
返還が苦しいと分かったら、次回振替日を過ぎる前に準備を始めます。すでに延滞していても、放置せず、延滞中の人向け手順を確認してください。
- 奨学生番号、次回振替日、延滞の有無、生活維持後に返せる月額を1枚にまとめる
- 一部なら返せるか、一定期間の返還が難しいかを分け、減額返還と返還期限猶予を比べる
- 申請事由に合う最新の必要書類を公式ページで確認し、オンラインまたは書面で願い出る